2021年 日々浴浴
2021年12月26日
ヘンリー・カットナー(Henry Kuttner)の懐かしい短篇集が出た。というか、確かハヤカワSFシリーズ 第一期で、予定に入っていたような記憶があるのだが。
その「ギャロウェイ・ギャラガー」シリーズの短篇集が出た。
正直、言うとびっくりである。ないなと思っていたから、マッド・サイエンティストものは難しいかなと思っていたので。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のエメット・ブラウン博士が典型的なパターンだけど、偶然と運命とで、ドタバタが巻き起こるというパターンが典型的。もしくは、『宇宙家族ロビンソン』のスミス博士のような微妙な悪役。
『宇宙家族ロビンソン』のリメイク、『ロスト・イン・スペース』はおもしろいです。
そのカットナーのシリーズ5篇がまとまった。
『ロボットには尻尾がない』 Robot Have No Tails(The Complete Galloway Gallegher Stories) (1952)translator:山田順子 竹書房文庫か18-1
cover:板野公一(welle design)/illustrator:まめふく commentary:中村融 2021/11/29 ISBN978-4-8019-2889-3
実は、5篇中、4篇は既に訳されている。しかしまとまったことが大きい。うれしいことです。
ボクベン一家シリーズもと思うものの、まあ、無理だろうなあ。
カットナーの復権を目指してと思うものの、ちょっとね、古いかな。
- 「タイム・ロッカー」 Time Locker (Astounding 1943/ 1)
- ギャロウェイ・ギャラハー(Galloway Gallegher)
- Pen Name:ルイス・パジェット(Lewis Padgett)
- 「次元ロッカー」translator:島岡純一(島岡潤平(Shimaoka Jumpei)) S-Fマガジン(S-F Magazine)1964/12 No.63 illustrator:中島靖侃(Nakajima Seikan)
- 「世界はわれらのもの」 The World Is Mine (Astounding 1943/ 6)
- 「世界はぼくのもの」
- 「うぬぼれロボット」 The Proud Robot (Astounding 1943/10)
- ギャロウェイ・ギャラハー(Galloway Gallegher)
- Pen Name:ルイス・パジェット(Lewis Padgett)
- 「自惚れロボット」translator:佐藤俊彦(Satō Toshihiko) Publisher:元々社(GengenSha)/宇宙科学小説シリーズ2 editor:(Raymond J. Healy)/(J. Francis McComas) Adventures in Time and Space
- 「うぬぼれロボット」translator:山田順子(Yamada Junko) S-Fマガジン(S-F Magazine)1979/ 6 No.248 illustrator:岩淵慶造(Iwabuchi Keizō)
- 「Gプラス」 Gallegher Plus (Astounding 1943/11)
- 「ギャラハー・プラス」translator:浅倉久志(Asakura Hisashi) 国書刊行会(Kokusho Kankohkai)/未来の文学 editor:浅倉久志(Asakura Hisashi) 『グラックの卵』
- 「エクス・マキナ」 Ex Machina (Astounding 1948/ 4)
2021年12月21日
R・A・ラファティ(R. A. Lafferty)は、魔術の名前だ。その書かれた作品の多くは実に魅力にあふれている。
未読の方は、まだこんな豊饒な作品群があることが、うらやましい。なかなかその作品の魅力を伝えることは難しいけど、はまるとはまるのである。
改めて再読したけど、いや、おもしろい、しかし量を読むとしんどいね。少しずつ読むのが正解かも、一篇一篇に懐かしい思い出があり、存分に浸らせていただきました。
再構成された短篇集でも、売れてほしいものだ。ますます、単独の短篇集を編むのが大変らしいのだけどね。
最初の短篇集は「アヤシイ篇」二冊目は「カワイイ篇」だ、個人的には二冊目の方が、傑作が多いと感じるのだけど。。。
改めて読んで、「あれ、こんなんだっけ」と思ったのは「どろぼう熊の惑星」、新しい発見がある。
- 『ラファティ・ベスト・コレクション1 -町かどの穴』 Best Short Stories Collection of Raphael Aloysius Lafferty translator:牧眞司(Maki Shinji) Publisher:ハヤカワ文庫(Hayakawa bunko)SF2342 2021/10 ISBN978-4-15-012342-0
- 「町かどの穴」 The Hole on the Corner (editor:Damon Knight Orbit 2 1967)
- 「どろぼう熊の惑星」 Thieving Bear Planet (editor:(Terry Carr) Universe 12 1982)
- 「山上の蛙」 Frog on the Mountain (Original 1970)
- 「秘密の鰐について」 About a Secret Crocodile (Galaxy 1970/ 8)
- 「クロコダイルとアリゲーターよ、クレム」 Camels and Dromedaries, Clem (F&SF 1967/10)
- 「世界の蝶番はうめく」 Groaning Hinges of the World (editor:Thoman M. Disch The Ruins of Earth 1971)
- 「今年の新人」 New People (IASFM 1981/ 3)
- 「いなかった男」 The Man Who Never Was (Magazine of Horror 1967/Summer)
- 「テキサス州ソドムとゴモラ」 Sodom and Gomorrah, Texas (Galaxy 1962/12)
- 「夢」 Dream(Dreamworld) (Galaxy 1962/ 6)
- 「苺ヶ丘」 Berryhill (Whiispers #9 1976/12)
- 「カブリート」 Cabrito (Funnyfingers & Cabrito 1976)
- 「その町の名は?」 What's the Name of That Town? (Galaxy 1964/10)
- 「われらかくシャルルマーニュを悩ませり」 Thus We Frustrate Charlemagne (Galaxy 1967/ 2)
- 「他人の目」 Through Other Eye (Future Science Fiction 1960/ 2)
- 「その曲しか吹けない」 The Only Tune He Could Play (editor:Damon Knight Orbit 21 1980)
- 「完全無欠な貴橄欖石」 Entire and Perfect Chrysolite (editor:Damon Knight Orbit 6 1970)
- 「《偉大な日》明ける」 Great Day in the Morning (editor:Damon Knight Orbit 17 1975)
- 「つぎの岩につづく」 Continued on Next Rock (editor:Damon Knight Orbit 7 1970)
- 『ラファティ・ベスト・コレクション2 -ファニーフィンガーズ』 Best Short Stories Collection of Raphael Aloysius Lafferty translator:牧眞司(Maki Shinji) Publisher:ハヤカワ文庫(Hayakawa bunko)SF2349 2021/12 ISBN978-4-15-012349-9
- 「ファニーフィンガーズ」 Funnyfingers (Funnyfingers & Cabrito 1976)
- 「日の当たるジニー」 Ginny Wrapped in the Sun (Galaxy 1967/ 8)
- 「素顔のユリーマ」 Eurema's Dam (editor:(Robert Silverberg) New Dimensions II 1972)
- 「何台の馬車が?」 The Wagons (New Mexico Quarterly 1959/Spring)
- 「恐るべき子供たち」 Enfant Terribles(Enfant Terrible) (EQMM 1971/ 6)
- 「超絶の虎」 The Transcendent Tigers (Worlds of Tomorrow 1964/ 2)
- 「七日間の恐怖」 Seven-Day Terror (If 1962/ 3)
- 「せまい谷」 Narrow Valley (F&SF 1966/ 9)
- 「とどろき平」 Boomer Flats (If 1971/ 8)
- 「レインバード」 Rainbird (Galaxy 1961/12)
- 「うちの町内」 In Our Block (If 1965/ 7)
- 「田園の女王」 Interurban Queen (editor:Damon Knight Orbit 8 1970)
- 「公明にして正大」 Square and Above Board (F&SF 1982/10)
- 「昔には帰れない」 You Can't Go Back (IASFM 1981/ 9/28)
- 「浜辺にて」 By the Seashore (Galaxy 1974/11)
- 「一期一宴」 One at a Time (editor:Damon Knight Orbit 4 1969)
- 「みにくい海」 The Ugly Sea (The Literary Review 1960/Fall)
- 「スロー・チューズデー・ナイト」 Slow Tuesday Night (Galaxy 1965/ 4)
- 「九百人のお祖母さん」 Nine Hundred Grandmothers (If 1966/ 2)
- 「寿限無、寿限無」 Been a Long Long Time (Fantastic 1970/12)
2021年12月19日
創元推理文庫(Sogen Mystery bunko) editor:小森収(Komori Osamu) 『短編ミステリの二百年06』
全六巻、完結おめでとうございます。
二年間、楽しませていただきました。また、同時に、いろいろ参考になる部分も多く、ミステリの奥深さを改めて感じさせてくれました。特に、こんな作家のこんな作品を見落としていたのかということを気づかせていただいたのは感謝に絶えません。
SF、ホラーからミステリに入ったもので、ごっそり抜け落ちてる知識を補完してくれたりしていますし、またミステリとホラー、SFの距離感が、それほど遠いわけでもないということを再認識させていただいたりしました。
資料的な価値も高い名著、ありがとうございます。
今後も、このアンソロジーを元に、より資料的な価値の高いものへと挑戦していきます。
怖い女性のお話が多いような気もしましたが、たぶんレンデル、ハイスミスのインパクトが強烈だったからでしょう。レンデルは読んでいるはずなのですが、忘れてました。
ハイスミスについては、所有していた初期短篇集と中期短篇集の二冊、事務所撤退の折りに、大量処分せざるを得ず、ろくに読めずに、資料も取れずになってしまったことを10年過ぎた今でも後悔しています。
しかたのないことなんですが。
クリスチアナ・ブランドも読み比べると、ぎょっとしました。
奥が深いな、ミステリはと、改めて考えさせられます。
- 『短編ミステリの二百年6』 The Long History of Mystery Short Stories volumes 6 editor:小森収(Komori Osamu) Publisher:創元推理文庫(Sogen Mystery bunko)299-07(M-ン-07-06)
- cover:柳智之 design:中村聡 commentary:訳者紹介/索引 2021/12/24 ISBN978-4-488-29907-1
- 「終(つい)のすみか」 A Place of Her Own ジョイス・ハリントン(Joyce Harrington)
- 「しがみつく女」 The Clinging Woman ルース・レンデル(Ruth Rendell)
- 「交通違反」 Traffic Violation ウィリアム・バンキア(William Bankier)
- 「拳銃所持につき危険」 Armed and Dangerous ジェフリイ・ノーマン(Geoffrey Norman)
- 「またあの夜明けがくる」 Those Awful Dawns パトリシア・ハイスミス(Patricia Highsmith)
- 「パパの番だ」 Daddy's Trun ジェイムズ・マクルーア(James McClure)
- 「バードウォッチング」 Treasure Finds a Mistress デイヴィッド・ウィリアムズ(David Williams)
- 「最期の叫び」 Screaming All the Way マイクル・コリンズ(Michael Collins)
- 「アッカーマン狩り」 Collecting Ackermans ローレンス・ブロック(Lawrence Block)
- 「家族の輪」 The Family Circle スタンリイ・エリン(Stanley Ellin)
- 「ジェミニー・クリケット事件〈アメリカ版〉」 The Gemminy Crickets Case クリスチアナ・ブランド(Christianna Brand)
- 「ジェミニー・クリケット事件〈イギリス版〉」 The Gemminy Crickets Case クリスチアナ・ブランド(Christianna Brand)
- 「短編ミステリの二百年」 小森収(Komori Osamu)
- 第十五章 MWA賞の凋落とクライムストーリイの行方
- 1 「七〇年代のMWA短編賞」
- 2 「七〇年代クライムストーリイのエース1 -ジョイス・ハリントン」
- 3 「七〇年代クライムストーリイのエース2 -ルース・レンデル」
- 4 「クライムストーリイの後継者たち」
- 5 「七〇年代クライムストーリイのもう一方の旗手 -ローレンス・ブロック」
- 6 「凋落の始まり」
- 第十六章 ウィンターズ・クライムとアンソロジーの時代
- 1 「ふたつのアンソロジーの間に」
- 2 「ウィンターズ・クライム輸入前史」
- 3 「ブリティッシュ・クライムストーリイの活況」
- 4 「パズルストーリイ作家たちのウィンターズ・クライム」
- 5 「「バードウォッチング」の指し示すこと」
- 第十七章 シリーズキャラクターの功罪
- 1 「七〇年代初頭の短編パズルストーリイ状況」
- 2 「ネオハードボイルド邦訳の背景」
- 3 「ダン・フォーチュン -ハードボイルド最後のサムライ」
- 4 「ローレンス・ブロックのシリーズキャラクター」
- 5 「ネオハードボイルドを超える可能性 -V・I・ウォーショースキー」
- 6 「シリーズキャラクターの時代のMWA賞 -ローレンス・ブロックと殺し屋ケラー」
- 7 「二十一世紀に入ったエドガー」
- 幕間 個人短編集翻訳の盛衰
- 第十八章 残りの二十年に向けて
- 1 「晩年のパトリシア・ハイスミス」
- 2 「屹立する作家の肖像ACT3」
- 3 「クリスチアナ・ブランドの軌跡」
- 終章 誰が謎を解いたのか
- 1 「「ジェミニー・クリケット事件」のふたつのヴァージョン」
- 2 「ふたつの「ジェミニー・クリケット事件」1 -その結末」
- 3 「ふたつの「ジェミニー・クリケット事件」2 -その冒頭」
- 4 「ふたつの「ジェミニー・クリケット事件」3 -ヘレンに触れられること」
- 5 「そして誰も解かなかった」
- 6 「Get over」
- 7 「結び」
2021年12月12日
『ユーモア・スケッチ傑作展』 editor:浅倉久志(Asakura Hisashi)
国書刊行会で、全4巻に再編成されて出版されるようです。
いろいろ欲しかったものも収録されるようで楽しみにしてます。解説は若島正さんだから、詳しい書誌情報もあるでしょう。
なにせ、調べにくいこと、調べにくいこと、しぶとく調査したので、印象には残っています。
このサイトの最初期の調査だったので不備がありそうなので、再調査したいと思っていても、膨大なサイトの手直しがあるもので、いつになるかわからない状態ではあるけれど。。。
再編成版のデータで、かなり直せそう。うれしい。
目立たぬところで、せっせせっせと対応中。
一応、ミステリマガジン(Hayakawa's Mystery Magazine)2014/ 7 No.701-のリストを追加を追加してます。約3年分くらい追加。
ここからリンクを張って、確認作業。さらにバックナンバーの精査作業。
SFマガジンとか、ナイトランドクォータリーとか、幻想と怪奇とか、単発増刊とか、まだまだこれから。
雑誌は、いっぱい収録作品があるので、後手後手になりやすく、苦労も多い。
少し酒も控えて、積読も消化して、リストも作る。
仕事もしてるし、体力的な衰えとともに、ああ、気力が。。。。。
2021年12月10日
ちょっと、愕然としたこともあって、意気消沈してますが、まあ、個人的なこと。
今週、なんとなく読んでて気になったのは、ある企画について。
頭に浮かんだのは、『のり』と『うちわ』。
なんとなく、その流れで浮かんだのは『みかん』と『かんせい』。
『かって』に『そうぞう』というのは、とても楽しいし、かってのファンダム仲間とは爆裂してました。電車の中で爆発してたら、からまれた経験もあります。
でもね、そのくらい、気を置けない連中のなかで、話すバカなお話を大好きでございます。
知的な刺激もあるけれど、世間的な常識を逸脱するのは、そこまで。
なんか、こんな言葉があったような「こころのほっするところにしたがえども、『のり』をこえず」
問題は『うちわ』だよね、これがあると、称賛がくるので、おれは天才だあとなりやすい、華で笑われている可能性を常に心に持ちましょう。
『みかん』『かんせい』は、未完(現在、進行中の作品でも。。。)を勝手に完成させてしまいましょうという、たまにリスト作ってて、ふと思う邪心でございます。
2021年12月6日
『SFマンガ傑作選』editor:福井健太 創元SF文庫
堂々たるサイコロ本、こんなに厚いと気持ちがいい。
1970年代、80年代のSFマンガを集めている。これこそ傑作というのではなく、読むきっかけにしてくれたらという想いが強いようだ。
「アトムの最後」は当時の時代背景が色濃く残っていて、すごく違和感ある作品だった。最初に読んだのはなんだったか、あまり覚えていないが、サンコミックス版だったか。通して読んだのは、この22冊が最初だった。
実家に置いたままにして、たぶん実家処分の時にいっしょに処分されたようだ。
コムブックス版の『火の鳥』は、人に貸したまま、戻ってこず。『アトム』も、まあいいやレベルのこだわりであったが、いまでは手元に置いておくんだったと後悔している。
松本零士の諸作品はメカと女性をマンガを書く時の参考にしていたが、その中身のなさに、なぜこんな絵を書けるのにもったいないと思っていた。『宇宙戦艦ヤマト』のコミックスを読むまでは。
萩尾望都の諸作品は、「11人いる」は傑作だけど、初期の少女マンガはまったく読んでいない。竹宮恵子も山田ミネコ、佐々木淳子も読んでいなかった。
ファンダムに首をつっこんでから、読むようになったが、中でも印象深いのは、「樹魔」である。ぶ~け掲載だが、確か西城に読め!と言われて、リアルタイムで読んだはずである。もう40年も前の記憶だけど、嫌なことは忘れ、良いことだけが記憶に残る。
懐かしい。
星野之宣も全集がほしいひとりだ。絵的には、あまり好きではないけども、やはり、大友克洋とともに残るべき作品だろうと思う。
あれ、大友克洋がはいってなかったね。藤子・F・不二雄もいないよね。
諸星大二郎の作品のインパクトは忘れがたい。いまでは、なんということもないけども、この絵はすごかった。この方のアシスタントをしてると、似たタッチになるんじゃないかと思われる。
続刊は、80年代~90年代になるのかな。
- 「アトムの最後」 手塚治虫
- 「ヤマビコ13号」 松本零士
- 「急流」 筒井康隆
- 「あそび玉」 萩尾望都
- 「胎児の世紀」 石ノ森章太郎
- 「生物都市」 諸星大二郎
- 「ジルベスターの星から」 竹宮惠子
- 「冬の円盤」 山田ミネコ
- 「昆虫惑星」 横山光輝
- 「金星樹」 佐藤史生
- 「リディアの住む時に…」 佐々木淳子
- 「ミルクがねじを回す時」 高橋葉介
- 「樹魔」 水樹和佳子
- 「残像 AN AFTER IMAGE」 星野之宣
- 「SFマンガ史概説」 福井健太
2021年11月27日
優勝おめでとう!
なんと20年ぶりですか、正確には19年かな。前回は2001年、自分も新たな道を探して苦しんでいた時期でしたので、あまり見ることが出来なかった日本シリーズでした。
1978年、ゼミの合宿で、軽井沢にいたときにはじめての優勝をリアルタイムで見て、おもしろかったですね。
1992、1993、1995年の際には、車の中で聞いていたものです。それぞれに記憶に残っています。
しかし、今年のシリーズは、凄い、本当に死闘にふさわしかったです。
オリックスの選手を覚えてしまいました。
来年もがんばってほしいものです。
5時間の死闘、見てるほうも、正直おなかいっぱいです。
2021年11月26日
健康診断にインフル・ワクチンと年末の忙しさの中で、対応してます。
体力がなくなってしまって、ろくに動けないのはしんどいです。年には勝てんか。
車の事故が多くて、高齢者もさることながら、運転者が近い年齢だと、どきっとします。たまたま、ハイエースを運転する機会があったんですが、本当に慎重に慎重にとなりました。
気をつけねばなりません。
しかし、自転車のマナーの悪さもひどい場合がありますし、自動車もさりげない煽りとか、わざとらしい嫌がらせを感じるときもあります。
怒らないように、気持ちを落ち着けてというところでしょうか。
日々、苦闘中です。
と、いうことで、今週一週間は、ヤクルトにはまっています。久々の日本シリーズ、燃えてます。さあ、今日はどうなるのか、こんな激戦は久しぶりです。
おもしろい。
2021年11月20日
もう11月下旬です。今年も年末ベストの時期になりました。10月、11月になると、なかなかな力作がいつも出てきます。
いろんな方々が、頭をひねりながら、今年のベスト10を決めていくのでしょう。
でも、わたしは思います。今年のベストを気にせず、自分のお気に入りだけでいいのではないでしょうか。自分のものさしを持って、他人様のものさしを気にすることなく、今年はじめて、これを読んだ、おもしろかったと声をあげることが大事だと思います。
ええい、評価なんか気にするな。好きなものは好きなんだと言えばよろしいのです。
それがマイベストです。
他人がどう思ってもかまわない。こんな変なものを好きと言っていいのかと、お迷いの方々へ、いいんです、あくまでも自分なんです。価値観は人さまざま、気にしないようにしましょう。
読んでも頭にはいらないわたしは、今年のベストは『ハコヅメ』です。何度、読んでもおもしろい。
まるで、七色の味の飴のようです。
SFじゃないって、いいんです。頭がついていっていません。
年を取ると、体力とともに脳力も影響を受けるということを身を持って体験しつつ、うまいものはうまいと言いましょう。
2021年11月14日
『大友克洋全集』が、来年一月から刊行開始だそうです。
この間、『童夢』がなんとなく読みたくなって、家の中を探せど、見つからず、処分した記憶はなく、『気分はもう戦争』とともにあるはずなんだけど、見当たらず。もう少し整理すればいいのかもしれないけど、そんなことしたら10年くらいかかるかもしれない。
たいした蔵書量じゃないんだけど、『本の雑誌』の本棚紹介を見るたびに、「いいなあ」と思う。しかし、たぶんに記憶力の低下がありつつあり、整理したとしても、どこに何があるか記憶しておく自信が欠落していく。
日頃、認知症で対応していると、蔵書は長期記憶にあたるのか、短期記憶にあたるのかと考えてしまう。若い時に読んだ本はしぶといくらいに覚えているのに、最近になるとまったく覚えていない。
自分の身をもって認知症対応をしているようなもんで、知識を実践しているような状態である。
ひとつわかったことは、個人差が大きい、それと自覚して訓練をすることにより、少しは延命できるように思われる。訓練方法は、自らに課題を課していければ効果は大きいように思う。自覚を伴うことが必須だと思われる。
話がコロコロ変わるのも、年取った証拠なのかなあ。
昔、漫画家にあこがれて、なれればいいなあという非常に他力本願な希望を抱いていたが、その程度でなれるはずもなく、現状があるのであるが、画力もなく、天才的な発想力もなく、構築できるほどの個性もないのであるが、妥協できるほどの賢明さも、聡明さもなく、ぐずぐずと居座り続ける根性の悪さだけはあった。
「がつん」と一発かまされたのは大友克洋の作品だった。
当時、日本大学経済学部美術研究会で悶々とした日々を過ごしていたわけで、「漫画研究会」はなく、漫画家志望のひとが何人か入部してきていた。
その中には抜群に画力のあるひともおり、そのたびに才能の無さを感じさせられていた。
中でも、奇想天外(Kiso Tengai)1979/11 No.44の掲載された「Sound of Sand」(comic) 大友克洋(Ōtomo Katsuhiro)のインパクト、うまいなあと思わされた。
大友克洋傑作集をせこせこ読みながら、すごいなあと溜息をつく。たどりつけない境地にジェラシーを抱くよりも尊敬を感じてしまう。
名作『童夢』を読んだときも衝撃感は忘れられない。
どう書けば、こんな緊迫した絵を書けるんだという驚き。
ほとんど同世代のなかで、大友克洋と江口寿史、鳥山明、その才能には尊敬を抱いている。
リアルタイムで、感じさせられたものには感謝である。
電子書籍にしない方針は、無理もないとは思うものの、なにかしら時代の流れの中で、もっと違う端末の開発により、可能性は広がってほしいと思う。
電子書籍で読むことの多くなった身としては、あの物理的なページをめくるワクワク感はなくなったなあ、とつくづく思う。慣れの問題なのかもしれないけれど。
2021年11月7日
映画『DUNE』が日本では苦戦しているらしい。紹介記事などを読むと難解だとか、過去映画化がどうのこうのと、壮大さがどうのとかあるけれど、今回の映画を見てないので、あれやこれや言えませんが、仕事も忙しく、身体の方も仕事の苦闘で疲弊してるもんだから、気持ちは動くのだけど、う~む、この紹介記事はどうなのと感じるところがある。
はっきり言ってしまうと、疲れ切った身体に鞭打たれるが星のごとくに見てやろうじゃないかという気持ちにならない。
過去の映像化されたものは、テレビドラマも含め、見ているが、どうみても、貴種流離譚の典型的な中世風異世界ものである。
壮大なテーマともいうが、妙薬メランジを巡る権力争いであり、多少、環境問題ぽいところもあるが、基本は冒険もの、そのへんを語らず、過去の映像作品が参考にしたとかなどというものだから、どうも引くよね。
前編、後編の二部作だっていうし、ラストをどうするのかという興味もあるのだが、異世界ばやりの日本アニメのようなお気楽さが感じられず、難しい顔をしながら、難しい意見をいうのは、どうにも残念な感じ。
過去の映像化も、いろいろあるものの、それぞれ個性的で、ホドロフスキーが騒ぐほどのものでもないように思ってしまう。
とはいうものの、小説は新訳で読むと、すんなりはいってきて、おもしろい。ぜひとも三部作をすべて訳してほしいのだけど、無理っぽい。
残念である。
後編ができてから、と期待しよう。
『最後の決闘裁判』も、評判がよろしくない。こちらも骨折ってまで見に行く魅力に乏しいのは確かだが、残念である。現代と照らし合わせて、映画というのは時代の鏡というべきものを負わされる部分はあるのだが、史実として受け止めればいいのだはないかとも思うだが。。。。見てからにすべきか。
『イカゲーム』、おもしろいね、子供の遊びってそんなに変わらないのかというところ。
日本人は妙なゲームのルールを作り出したりするのだけど、これはそのまんま、脚本がすばらしい。特に工夫はなく、書くべきところを念入りに書いているからこその迫力。
様々な社会問題を織り込ませながら、エンターテイメントに仕上げるのは素晴らしい。
こういう創造性を失ってしまうと、まずいのではないかと思われる。オリジナルな魅力を、日本は提供してきたのに、世界に抜かれているのは、なにか国民性としての大事な何かが失われてきつつあるのではないかと、心配になる。
わたしが心配したからといって、日本が沈没するわけでもないのだけど。
相変わらず、ぽつりぽつりと読んでます。
2021年10月28日
SFは、細かい部分を粗雑にすることなく、丁寧に描くことを大切にする。なぜなら、壮大な嘘だから。
全体的な構築は嘘っぽくても、細かい部分に真実味を加えられれば、それはSFになると思う。
例え、智子が剣を背負って、登場してもだ。
日本では、ブルドーザーと言われた小松左京が、いた。中国にも、そうしたブルドーザー的な作家がやはり必要だったのだろう。
英語圏で言えば、ある程度読んできた方には、すぐに思い浮かべる作家がいるだろう。
時代的な流れ、活性化した文化の成長期には、こうした作家がいるように思う。力技で、ぐいぐい押しまくる伝説のような作家が。
土地は均されて、家が建ち始めると、様々なひとたちが現れる。年中、酔っぱらっているかのようなひとが出てきたりもする。ぶちぶち言いながら、ふらふら歩きながら、わけのわからないことを語りながら、その声に耳を貸すとなぜか信者になってしまうらしい。
物語のようでありながら物語でなく、さりとて深淵を垣間見せてくれる力量を持ちながら、一歩引いている。
壮大な嘘(SF)の構築物には、様々な形容の作家がいる。
いろいろな作家が好きだ。そのバラエティさを味わえる幸運を噛み締める。
2021年10月18日
リドリー・スコット監督の『最後の決闘裁判』が公開中。
決闘裁判、私的な決闘は除いて、公に決闘をしたのは、そんなに多くないらしい。翻訳されたのは2007年、この頃のノンフィクションはおもしろいものが多く読んでいた。
最後になった決闘裁判に焦点をあてている。
『決闘裁判 -世界を変えた法廷スキャンダル』 The Last Duel エリック・ジェイガー(Eric Jager)
おもしろい一冊だったのだけど、映画にするとはねと思う。映画化の話はずいぶん前になにかで読んだ気がするのだが。
映画館まで見に行く気力があるかどうかが問題だけど、本はおもしろい。しかしだ、ここに書かれていた当事者の妻の姿をどう描くのかが問題だよなあと思ったのだが、どうなのだろう。
と、本を探すが見当たらない。もしかすると事務所撤退の折に処分してしまったか。
文庫で再刊もされてるし、、、。
リドリー・スコットの映画を、少し集中的に見始めているので、その中で気になった。しかし歴代の作品、有名どころだけでも見続けるというのは気力が必要なのね。
『三体 死神永生』で、その分厚さにめげていたけど、ようやく半分を越える。あ、確かにおもしろい。
なんでもありの詰め込み方にはびっくり。おもしろいじゃございませんか。
今頃、遅いって、しかたありません、体調や気力にも関係してます。ようやく新たに開眼したのです。
2021年10月15日
演出は、物語を表現するときの「肝」だと思う。これを過剰にするか、しないかで、物語の様相は変化してくると思っている。
テレビドラマ『日本沈没』を見て、ああ、これはなんだなあ、一般的なマッド・サイエンティストを演じているんだなと見える。ネットフレックスで世界に配信なのと、驚く。
アメリカのドラマでも、これはひどいよなというのがあるが、時間と予算の掛け方が違うので、それなりにそこそこ見られるものに仕上がっている。手直しができるのもいいのだろう。
見るに見かねて、嫁も見るのは止めると言い切ったし、わたしもよくわかる。
ドラマの落としどころはどこにあるのか、日本は無くなった、しかし希望はあるでは、ちょっとちがうように思う。
日本という国がなくなったときの、日本人という国民のアイデンティティを維持できるのかとか、日本人とは何かということを小説では語っている。
そして、なおかつたくましい民族であるということを高度成長期、ほんの少し頓挫したオイルショックのあとに出版されたことでベストセラーになったんだろうと思われる。
『日本沈没 第二部』では、更にたくましく成長していく日本人を描いている。
わたしは、世界に散った日本人を巡る種々の苦しみや災厄から、立ち上がる民族の力が第二部になるのだろうと思ったが、これだけナショナリズムの台頭や国際社会の変化があっては、書ききれなかったのだろうと思う。
はっきり言って大統領ひとり変わっただけで、大きな変化を起こすなんて、ありえないと思っていたけど、現実に見るとは思わなんだ。
第三部は、その苦難の果てにとなるんじゃないかとは思ったが、壮大すぎるスケールとひとりでは予知しきれない現実社会、国際情勢では、それも無理があると、、、、。
さてさて、そんななかでテレビドラマでは、国土が失われる民族の絶望と希望をどう表現するか、一話を見る限り、ちょっと違う方向にずれこんでいるように思われる。
世界に配信なのね。
2021年10月3日
作者の意図するところとは、違う感じ方、読み取り方、理解、解釈するのが感想・評価・評論であり、それによって巻き起こる非難や批判を受けてたたねばならないというわけでもない。
自由に、「こう思った!」というのは大事なことであるし、クリエイションの一歩ではないかと思う。
『Sonny Boy』、最終回まで見てみた。
根幹は、少年少女の成長物語と思う。決断をしてこなかった少年と、何を決断すればいいのかわからなかった少女の、決断の物語。簡単に決めてしまえるひとや、大きく変化を起こせるひとたちと違う不定、不安、不満、不機嫌を抱えたひとたちの物語。
様々な経験を積み上げたなかで、状況はコロコロ変わり、まるで試練であるように襲い掛かる。
そしてゆっくりと成長して決断をする。でも大きな変化は起こらず、これで良かったのかと不安、不満、不定、不機嫌を抱える。
語り合う、柔らかく接する、少しづつ慣れていくしかない。
じじいになってから思うと、そんなことはいくらでもあるよなと思ってしまうのだが。抽象化できるほどの感性もなく、創作できるほどの根性もない。あ、愚痴か。
おもしろいというか、こんな物語を作ってしまうと、次がしんどいだけではないかと思うが、才能の枯渇を恐れず、チャレンジするのは、素晴らしい。
異世界もの全盛で、しかもパターン化したラブコメが圧倒的なアニメのなかで、これは素晴らしい。
本が読めなくて困っているのだが…
2021年9月23日
いろいろあって、とても書ける状況でもなく、読める状況でもなかったけど、ようやく落ち着きつつある。
考えさせられることも多く、二週間のアクセス経過も見ると、これはもしかしたらフロント部分をどうのこうのしなくても、それほどアクセス数に影響ないのかなあと思えるようになってきた。
とはいえ、ここに書いてるのは、ほぼ愚痴みたいなもんだから、精神の安定には大事なのかもしれない。
『ファウンデーション』の予告を見ると、なんとなく違うような気になってしまう。見たいよね、とは思うのだけどどうなのだろう。
『銀河帝国の興亡』の新訳版をみると、牧眞司さんが書誌をしっかり載せており、見ると、「ああ、ここのデータは、なんとまあ、昔のままだったか」と思った次第。
訂正しておきます。と、いうか古いままのデータは、危うい部分がいっぱいあるんです。当時といまでは確実に得られる量が違いすぎるので。言い訳かな。
アクセス数を増やそうと相当な頑張りをしなきゃと思っていたけど、仕事も忙しいし、無理しないでいいかと思ってしまった。
すこし気楽にします。今後もよろしくお願い致します。
2021年9月6日
『帝国という名の記憶』上下巻、アーカディ・マーティーン、内田昌之訳ハヤカワ文庫SF。
銀河帝国の宮廷陰謀劇とでもいうか、思うに、作品もそうだが、作者のひととなりにも影響があるのではないだろうかと、ここんとこのヒューゴー賞を見てると、ふと感じる。
率直に言ってしまうと、ヒューゴー賞の期待に対して、なんとなく違うものが感じる場合が多くなったように思う。
ヒューゴー賞(Hugo Awards)
ファン投票なんだから、作者に対する思い入れも当然、反映されているわけである。同性のコンビという登場人物たちのスタイル、昨今の風潮にあるのは間違いないわけだけど、この作風、安定の内田訳で読みにくさはなく、すらすら読めるし、その世界には溶け込めるのだけど、なぜか、読者としてのわたしには違和感がある。
楽しめればいいというのは確かなんだけど、思ったよりもしんどかった。
頭がついて行ってないのかなあ、年なのかなあと少し思う。
ラストに集約されていく活劇もの、スペースオペラのように手放しで拍手できるわけではないけど、なぜか、?がつきまとう。そんな感じ。
C・J・チェリイ(C. J. Cherryh)の影響をあげているけど、色褪せた太陽シリーズの三冊は、わたしもはまった。独特の色彩感の異世界ものは、いまでも傑作という思いが強い。
それに対しての『ダウンビロウ・ステーション』『サイティーン』は、あまり感心せず、再読本になっている。この年になってくると読むかどうかはわからんが。
この感心せずという部分と今回のこの作品に対するモヤモヤ感は、もしかしたら同一のものなんじゃないだろうかと思う。
おまえは読み間違っていると言われると、なんとも言えなくなってしまいますが。
アニメの『Sonny Boy』がおもしろい。
江口寿史の絵が久々に動いているよと思い、見始めると、あの『ロスト』のようなワクワク感がある。『漂流教室』という表現もあるけど、回が進むごとに違うものに感じる。
ともかく、どう結末に動いていくのか、すごく楽しみである。でも、本当にどうするのだろう。
考えられないアクロバティックな構成を期待したいです。
2021年8月29日
S-Fマガジン10月号を読む。ハヤカワ文庫JAのSF部門の特集、ハヤカワ文庫JAのリストもある。
ハヤカワ文庫JA(Hayakawa bunko)JA 1973-1995年
ハヤカワ文庫JA(Hayakawa bunko)JA 1995年-
翻訳ものメインということでやっているが、もともとはSFファンであるので、いずれは日本作家も作りたいと思って、資料はあるのだが、新しい作家が出るたびに思い悩む。どうしよう。
こちらはぼちぼちと思い、一応作成は継続させている。ファイルもこっそりと作りだしているのだけど、メインの翻訳ものの終了がまったく見通せないので、苦労する。
今回、見てて、なんかリストに間違いあるなと思い、チェックする。欠番が不明確になってたので再チェック。
伴名練氏の「編纂の歴史」に、名前が出てきていたので、こりゃまた正確性を確保しないとまずいなと思った次第、もう管理者もわけわからないくらい膨大になっているのでご指摘を受けないと、どこかどうなっているか、よくわからなくなっている部分もある。
愚痴は止めよう、少し手入れしました。抜け落ちがあったので修正を。国会図書館のデータは、わたしも使ってますが、稀に間違いじゃないのかなというのも存在するのは確か。
四点リーダーは悩むな、正確な表記をと思うけど、うっかりミスとか間違いとか、すべてなくすことは難しい。
ミスはあるとは思うが、新たにエールを戴いたと思っておこう。マガジンリストも1980年以降を正確に記事までデータ化しようというのは思うものの、はっきりいうと、めんどくさい、そこを乗り越えなきゃならんのだけど、、
間違いがあったら教えてください。
2021年8月25日
『ハコヅメ 交番女子の逆襲』の第18巻にはまっております。伏線伏線がわりと多くて、先の展開はまったく読めず、けど、なんとなく想像するに河合と如月はないなと思う。じゃ、源か山田か、そぐわないなとくると、まったく出てきていない新登場の人物か、意外性で、中富課長あたりは…。源と桜の線は多いにありそうだが、藤が浮く。
「奥岡島事件の真相」はえぐいことになりそうだが、裏の裏がありそう。ここで何か別の事件とからんで、大きいことになるかどうか。ふと、思うと如月はやばいんじゃないのと思える部分もあり、交番所長は黒いでしょと思うものの、うーむ。また大きな悲劇がくるのかな。
などと、アホなことを考えていると他のものが読めん。しかも、なんかここのところ話題性十分の作品がごそごそ出ている。
追いつかない、アップルテレビで『ファウンデーション』の映像化、『デューン』の公開、おまけに時の車輪。
大変だあ。
『不死身の戦艦』 Federations (2009)J・J・アダムズ(John Joseph Adams)編、佐田千織/他訳創元SF文庫
収録作品は原書は23編。順番は以下の通り、ここから16編の抄訳。
副題に『銀河連邦SF傑作選』とあるが、連邦そのものをテーマというより、連邦の中、帝国の中でうごめくひと、ものたちの物語だ。
いくつか再録もあるし、古いのと新しいのが入り混じっていて、ある意味、おもしろい。
- 「Introduction」 (John Joseph Adams)
- 「囚われのメイザー」 Mazer in Prison オースン・スコット・カード(Orson Scott Card)
- 「カルタゴ滅ぶべし」 Carthago delenda est ジュヌヴィエーヴ・ヴァレンタイン(Genevieve Valentine)
- 「Life-Suspension」 (L.E. Modesitt, Jr.)
- 「Terra-Exulta」 (S.L. Gilbow)
- 「戦いのあとで」 Aftermaths ロイス・マクマスター・ビジョルド(Lois McMaster Bujold)
- 「Someone is Stealing the Great Throne Rooms of the Galaxy ハリイ・タートルダヴ(Harry Turtledove)
- 「監獄惑星」 Prisons ケヴィン・J・アンダースン(Kevin J. Anderson)&ダグ・ビースン(Doug Beason)
- 「Different day」 (K. Tempest Bradford)
- 「Twilight of the Gods」 ジョン・C・ライト(John C. Wright)
- 「不死身の戦艦」 Warship G・R・R・マーティン(George R.R. Martin)&ジョージ・ガスリッジ(George Guthridge)
- 「白鳥の歌」 Swanwatch ユーン・ハ・リー(Yoon Ha Lee)
- 「スパイリーと漂流塊の女王」 Spirey and the Queen アレステア・レナルズ(Alastair Reynolds)
- 「Pardon Our Conquest」 (Alan Dean Foster)
- 「人工共生体」 Symbiont ロバート・シルヴァーバーグ(Robert Silverberg)
- 「還る船」 Ship Who Returned アン・マキャフリー(Anne McCaffrey)
- 「愛しきわが仔」 My She メアリー・ローゼンブラム(Mary Rosenblum)
- 「巨人の肩の上で」 Shoulders of Giants ロバート・J・ソウヤー(Robert J. Sawyer)
- 「文化保存管理者」 Culture Archivist ジェレミア・トルバート(Jeremiah Tolbert)
- 「ジョーダンへの手紙」 Other Side of Jordan アレン・スティール(Allen Steele)
- 「Like They Always Been Free (Georgina Li)
- 「エスカーラ」 Eskhara トレント・ハーゲンレイダー(Trent Hergenrader)
- 「星間集団意識体の婚活」 One With the Interstellar Group Consciousnesses ジェイムズ・アラン・ガードナー(James Alan Gardner)
- 「ゴルバッシュ、あるいはワイン‐血‐戦争‐挽歌(ばんか)」 Golubash, or Wine-Blood-War-Elegy キャサリン・M・ヴァレンテ(Catherynne M. Valente)
2021年8月17日
『火星へ』 The Fated Sky メアリ・ロビネット・コワル(Mary Robinette Kowal)、酒井昭伸訳、ハヤカワ文庫SF2331,2332
前作、『宇宙へ』の続編、リーダビリティはよく、すいすい読めるし、人物造形はわかりやすく、50年代から60年代での差別問題をうまく取り込んで、作られている。
公民権運動と言われているが、基本的な人権が得られたのはそんなに古いことではなく、60年くらいしか経っていない。古くて新しい問題なので、ここ20~30年の人的な差別感覚は、激変している。
だけど、30~40年で大きく変わった差別感覚は、鋭敏なひとから見れば、怖ろしく遅く見え、鈍感なひとからは、「なんでそんな細かいことまで」と感じるのであろう。
それは、もう失言や迷言や、言ってはならない思想や感覚まで、ぼろぼろと出る。
明察という言葉があるが、少なくとも社会と接する人間は、やはり明るく世界や社会を察する感覚器官を研ぎ澄まさないといけない。まるで、身内で話すようなアホな発言は、公ではとどめておけばよいのに思うが、人間性が出るんだよね。本当に最後の最後には人間性が、気を付けましょうね。
コンピュータが未発達の世界というおもしろさもあるが、なんといったら良いのかな、50年代のジープを運転する感覚。電子装備なんかまったくなくて、動かなくなっても、エンジン周りをなんとかすれば、また動くといった感覚かな、映りの悪くなったテレビを、「てめえ、この野郎」と言いながら斜めにぶったたくと、とりあえず、よく映るという。。。。
『アポロ13』 Lost Moon ジェフリー・クルーガー(Jeffrey Kluger)&ジム・ラベル(Jim Lovell)が好きで、映画を何回も見ていたが、軌道修正する場面は、「まじかよ」と呟きながら見ていたが、一番好きな場面は二酸化炭素の除去装置の手作りと、アンペアの確保、事故状況の場面、この作品にも似た場面は出てくるので、技術的な部分はよく似ているよなと思いつつ、楽しませていただきました。
三作目も出ていて、翻訳されそうだけど、若干の不安は感じることがある。月、火星と来ると、次はどこへ行くんだ。月へふたたびか。
2021年8月13日
『時の子供たち』エイドリアン・チャイコフスキー(Adrian Tchaikovsky)
上下巻、竹書房文庫、で、お願いなんだけど、配色が緑と白、黒の蜘蛛の巣掛け
あのー、視力も特に弱っているなかで、この装幀では、上下の区別がつきにくいです。そりゃ、装幀に関しては画期的な『ダールグレン』があるけれど、本棚の本をだして、これの一巻目と二巻目を判別するのが、まるで視力検査、とっとと中身を確認しちゃいます。
ということで、アマゾンで買っても、ばかみたいに上巻をうっかりふたつ買うというおバカをした。届いた当初、まったく気づかず、さて解説はどこかいなと見るが、まったくない。え、解説なしと思ったが、しみじみ見ると、なんか同じ。たまにやらかしてたおバカをしないように注意してたんだけど、失敗は忘れたことにやってくる、むううう。
内田昌之さんの訳で、すんなり読めて、しかもド直球のストレートさ、いや、まあ、おもしろい。
久々に、なんか気持ちよかった。
ふと、思ったが、『地球の長い午後』の「ツナワタリ」から発想を得ているのかなという気がしないでもない。
2021年8月9日
オリンピックも終わったが、コロナの状況は終わりそうにない。女子ゴルフや女子バスケ、柔道など、ちらちらと見ていたが、女性の活躍が目覚ましかったように思う。
女子ゴルフ、4日間、なんとなく追っていたが、ラストまでのメンタルの維持が素晴らしい。プレーオフになると根性を見せてくれる。
この暑いなかで、選手のみなさんは、よくがんばりました。
今週、二回目のワクチンだが、発熱が心配である。しかし、感染爆発は明らかに政府の失策だろう。信、望、愛を失くした発言には、ひとは有能さを忘れてしまうということだろう。
車に置いてきてしまったり、電車内で刃物で殺してやろうとしたり、とんでもない奴も出てくるし、これから、どうなるんだろうという不安しか感じない。
小説は現在進行形が多くて、暑いし集中力が途切れる。
そんな中でようやく『プライベート・ライアン』を見る。見そびれていたんだが、冒頭のオマハビーチの描写は過激、ソフトさが欠片もない。
巣ごもりの中で、プラモを作りたいと思ってるのだが、いざ、やってみると眼はかすむは手は震えるは(別の要因があるかもしれないが)細かい作業は厳しい。塗装に凝り始めると、遅々として進まない。
ただいま、ティーゲルを作成中、大きいものよりテッケンクラートや装甲車の方が好き。
映画の中で、そのテッケンクラートが出てきて、曲がるとき、ほぼ片方のキャタピラが浮き上がっていた。いや、びっくり、もう少し鈍くさいかと思っていたのだが、出てくる戦車はご愛敬というレベルだが、ティーゲルの重厚感は35分の一でも見ているだけで、うっとりとなる。その重さがないのが残念。
ドラマ『アキラとあきら』の出来がよくて、久々にじっくり見てしまいました。
余計な肥やしばかりをインプットしているばかりで、困ったもんだ。
リストの方は、かなり細かい修正をいれつつ、追加作業も行っています。今後ともよろしく。
2021年7月31日
ランズデールか、ランズデイルか、当集成では、ジョー・R・ランズデイル(Joe R. Lansdale)にしてあります。
いずれは、読みたい作家のひとりです。『ボトムズ』とか、なんですけど、けっこう短編は読んでまして、変なもの書く作家でもあるなと、これは誉め言葉です、思っていましたが、翻訳が出ちゃいましたね。
新紀元社のRoman Fantastiqueのふたつめ、『死人街道』 Deadman's Road、植草昌実訳
「死屍の町」「死人街道」「亡霊ホテル」「凶兆の空」「人喰い坑道」の五つの短篇集ですが、最初の作品が半分以上、で、まあ後半ふたつ読んでおけばいいかなという感じ。
それなりに迫力はあるが、発表年代を考えると、見慣れた光景と言っていいのか、よくわからないが、そういうものになっている。ゾンビ西部劇である。
西部劇は日本では流行らない、と言われたのは、大昔であるが、確かに翻訳もあまりないし、アーネスト・ヘイコックス(Ernest Haycox)、マックス・ブランド(Max Brand)、ルイス・ラムーア(Louis L'Amour)、ゼーン・グレイ(Zane Grey)くらいしか、記憶の中からほじくり起こすと、アメリカ古典大衆小説コレクションくらいかな。
サミュエル・コルトが拳銃を発明し、南北戦争後にテキサスから他の州への牛移動をしていた、『ローハイド』だ、今でもあの曲を聞くと、気持ちが盛り上がる。あと「ワシントン広場の夜はふけて」、いいね。
日本で言えば、明治期の西南戦争の頃らしいが、ごくごく短い期間を西部劇の舞台になっているらしい。
個人的には『西部開拓史』『大いなる西部』が大好きで、少なくとも3回以上は見ているし、まあ『明日に向かって撃て』や『俺たちに明日はない』もいいけど、ストレートなものはあまり好きじゃない。
『スーパー・ナチュラル』のコルト銃のエピソードは、ああ、そんなんかいなと思ったもんだが、十字架に聖水に聖書の切れはしに、ことゾンビ西部劇には、欠かせないアイテムがいっぱい。
キングの『ダーク・タワー』がなんなんねんと思った読者としては、やはり徳川三百年の時代劇の方が、しっくりきます。
2021年7月25日
『海の鎖』editor/translator:伊藤典夫 国書刊行会/未来の文学の最終配本
今回、改めて読んでみた。「偽態」は、金星でしたか、すっかり抜け落ちておりました。不定形生物でなんにでも化けられるというのは、『火の鳥』のムーピーを思い出す。
未来篇を先に読んでいたので、これムーピーじゃんと思ったのを思い出す。人間もどきとか、何か、人間に化けるという部分に根本的な恐怖を人間は抱えていると思う。
「神々の贈り物」も、こんな話だっけと思った。うろ覚えすぎますねえ。
「地を統べるもの」、途中で出てくるガジェットというか、妙なもので思考を停止させられるというか、それが持ち味なんだろうけど、長篇ふたつとも、あらすじさえも覚えていないという困ったものだ、けど、読みたい。
「最後のジェリー・フェイギン・ショウ」、やはりあまりおもしろくは感じなかった。こういうものを読み解くセンスはありません。純粋に楽しめばいいんだけれど。
「海の鎖」、泣かせではないけど、哀しい人類の物語。
最初に読んだときも、長いなと思ったことを思い出した。丁寧に丁寧に積み上げていく描写がいきる。
久々になつかしさに浸りながら、読み切る。なんとか、また読めるようになったかな。
これが伊藤典夫氏の最後のアンソロジーになるのでしょうか。
新潮文庫の復刊、いや改めてテーマアンソロジーも読んでみたいものだけど。
ここ10年ほど、読めないなと思ったものが、パラパラ出ているので、驚いてますが。
アンソロジーは難しいかもしれませんが、スキャナーや書評をまとめたものを必ず、お願いします。
予定で出て、いつのまにか消えていますが、お願いしますね。
2021年7月18日
『時の他に敵なし』 No Enemy But Time
マイクル・ビショップ(Michael Bishop)translator:大島豊 Publisher:竹書房文庫び3-1 2021/ 6 ISBN978-4-80192669-1
ネビュラ賞受賞作で、訳されていなかった80年代の長篇だったのだが、訳されていないのには、理由があるというか、まあ『ニューロマンサー』には勝てんはなあ、時代的に不幸だったし、おまけにややこしいビショップの真骨頂みたいなところもある。
納得したが、読みはじめて、早速つまづいた。読めん。まったく進まない。
少し、頭を抱えてしまった。
翻訳されたことは喜ばしいのだけど、いまだに理解できていない。
あまりにも進まないので、途中で中断した。
ようやく読んだが、も一度読めとなると、正直、腰が引ける。
2021年7月15日
読めん!
リーディング・ブロックとでも言うのか、そんな言葉はないけど、書けないんじゃなくて、読めなくなってしまった。まったく読む気がしない。
夏場になると、どうしても意欲が減退してしまって、まったく一行たりとも読めない。漫画は読めるよ。小説がだめなの。そのうち読めるだろうと思っているが、たまりにたまる本に溜息ばかり。
単純に仕事疲れかとも思うが、若い連中と同じ動きをしていると死ぬ、体力が続かない。無理するつもりはないのだけど、どうしても身体が動くんだよね、弱ったもんだ。
アマゾンで、『トゥモロー・ウォー』を見る。
どこかで見たような映像と、どこかで読んだようなストーリー。しかしだ、異星人のデザインに昆虫、特に蟻とか蜂を使うのは止めませんか、爬虫類や両生類を使うのも、その生理的な嫌悪感を煽るために使うんだろうけど、既に半世紀は逆行しているようなもんだ。『エイリアン』から脱却できんかね、けっこう好きだった、『スターゲート アトランティス』の一場面のような映像があってね、ああ、既視感が。
もう親子の葛藤と愛情にあふれて、敵と対するなんて、どうにもこうにも背中がむずむずするような展開なんだが、破綻してるよね。細かいこと言ってもしかたないけど。
はるか昔の黒猫小猫のモンスターというのは、画期的であったんだね。
猫と言えば、新宿駅の三毛猫3D、すごいね。
主題歌に惹かれて見てしまったが、なかなかよかったのが『色づく世界の明日から』、P.A.ワークスの作品を追い続けているのだが、これもよかった。
地味だよ、アクションなんかひとつもなし、それでも見せてくれるんだよね。
2021年7月8日
エリザベス・ハンド(Elizabeth Hand)『過ぎにし夏、マーズヒルで』東京創元社創元海外SF叢書
「過ぎにし夏、マーズヒルで」 Last Summer at Marshill (1994)
「イリリア」 Illyria (2007)
「エコー」 Echo (2007)
「マコーリーのベレロフォンの初飛行」 The Maiden Flight of Mccauley's Bellerophon (2010)
4篇を収録、ネビュラ賞(Nebula Award)、世界幻想文学大賞(World Fantasy Awards)をそれぞれ収録した作品集。
『冬長の祭り』は、それほどおもしろくなかった記憶がある。異世界ファンタジーの一冊だったと思う。素質的にはファンタジー要素の強いひとなのだろう。
4篇とも、幻想的な短編であるが、表題作はアメリカ人の好きそうなスピリチュアル的な作品。抵抗はないのだけど、思わず「好きねエ」と呟いてしまいそう。
人間、皆、絶望から這いあがる術を求めているものです。
ダイヤモンド社(DiamondSha)や、東洋経済新報社(Toyo Keizai Inc.)の出版ものを見ていると、経営本の中になぜか、数多くのスピリチュアル系が多くある。
知識だけでは生き残れないというところか。
この中で、「イリリア」が一番よかった。この手の人生の風景を切り取ったような展開は、自分好みなのである。
また、雨だ、止まない雨はないとは言われるけども、辛いね、この雨は。どうにかしてほしいものである。
けれど、変えられるものを、変えない政治家は、はるかな高見から下々の生活を見下ろし、我々の言う通りに動かないから、また締め付けなければならないんだというような高飛車な対応で、自分たちの都合に合わせて、これは行う、これは行わないと決めている。
天罰が落ちてほしいひとには、なかなか落ちないものなのである。
2021年7月4日
大谷くん(なぜか、こう呼びたい)の活躍に酔いしれている間に、災害が起こり、まだまだ雨も降りやまず、早くの救出を願います。
もう一週間、雨は止まず、仕事上、雨が降ると本当に大変で、それでなくても不足しているのに、余計な労力がのしかかる。
でもね、これで雨があがると、強烈な太陽が降り注ぎ、季節は高温の夏に。それも辛い。寝苦しい夜に、昼は悪夢のような太陽が。
読んでから書くことを心がけてきたけど、今回、本としては読んでないのだが、個々の作品は読んでいる。
『海の鎖』editor/translator:伊藤典夫 国書刊行会/未来の文学の最終配本
「偽態」 The Counterfeit Man アラン・E・ナース(Alan E. Nourse)
さすがに「焦熱面横断」は古すぎるか、古き良き水星の暑苦しいひとつ、「旅行かばん」もいいのだけど、「コフィン療法」が一番好き。
「神々の贈りもの」 The Gift of the Gods レイモンド・F・ジョーンズ(Raymond F. Jones)
訳されているなかでは「子どもの部屋」「騒音レベル」と、この作品かなと思います。
「リトルボーイ再び」 Another Little Boy ブライアン・W・オールディス(Brian W. Aldiss)
ああ、掲載されてしまった。攻めてるなあ。
「不可視配給株式会社」と、この作品は両極端、解説は、その後を書いていて、矢野徹氏のご尊顔を思い出してしまいました。
「キング・コング墜ちてのち」 After King Kong Fall フィリップ・ホセ・ファーマー(Philip José Farmer)
この作品は、翻訳された倉阪鬼一郎氏のものは読んでいないが、なぜにこんなに違うのかと思うほどだったのを思い出す。懐かしい一篇。ファーマーのミーハーさがちょっと違うんじゃないのという方向に進んだひとつ。
「地を統べるもの」 Settling the World M・ジョン・ハリスン(M. John Harrison)
どこやらで短篇集が出そうなんで期待してます。傑作です。
「最後のジェリー・フェイギン・ショウ」 The Last Jerry Fagin Show ジョン・モレッシイ(John Moressy)
埋もれていた作品のひとつ、今回、改めて読みなおそうと思っているひとつ。大判の雑誌、オムニを、紙質が良くて、手に持っては読みにくいこの雑誌を読んでいた手触り感を思い出す。
「フェルミと冬」 Fermi and Frost フレデリック・ポール(Frederik Pohl)
あまり好きではなかったポールの傑作のひとつ。
「海の鎖」 Chains of the Sea ガードナー・ドゾア(Gardner Dozois)
少年と異星人の侵略とを、ちょっと凝った書き方をした泣かせのひとつ。改めて読みたいひとつでもある。
懐かしいなあ。
2004年7月に始まった未来の文学シリーズ、17年たって完結です。それでも完結した、めでたい。読めなかった作品もこの叢書のお陰で読めたものも多く、完結してくれたことは喜ばしい。
当時、なかなか海外SFが読めない時期で、この叢書のありがたかったことか。楽しみがまたひとつ終わってしまった。さびしい。
で、なんとかしてほしいのが、「サンディエゴ・ライトフット・スー」 San Diego Lightfoot Sue トム・リーミイ(Tom Reamy)、デーモン・ナイト(Damon Knight)の短篇集、『生存の図式』 The Watch Below ジェイムズ・ホワイト(James White)等々、ございます。
まあ、難しそうだけどねえ。
2021年6月27日
鬱陶しいお天気に、少し、体調もやられ気味、なんとか持ちこたえているけど、しんどい。
文字が追えないので、コミックばかり読んでいる。
『ハコヅメ』の17巻と『ハコヅメ アンボックス』、警察ものとしても、なかなかな出来で、びっくりしてる。
地方の県警のそのまた、地方署というのが、実にいい、東京で起こりえるものと違う設定を、活かしている。個性的な面々もおもしろく、特に「黒田カナ」が主人公の『アンボックス』は、こんなキャラを、こんなにしてしまって、いいのかと、とても疑問に思った。くノ一捜査官は、もっと活躍できそうな気もするけど。
16巻で、キリストの「最後の晩餐」のような絵があって、ひとりだけ、背を向けている。そんな伏線の張り方もおもしろく、「奥奥島事件」「同期の桜」と、素晴らしい。
まるで、87分署(はちじゅうななぶんしょ)ではなくて、(はちななぶんしょ)と読むのが正しいらしいというのは、最近知った、ものみたいなおもしろさがある。
お薦めです。
山本おさむの『赤狩り』、いずれ、アメリカの物語を、本のリストだけで構築してみたいなと思っていたけど、これも1950年代のアメリカを丁寧に事実を構築しながら書いている。
実は、『そばもん』が好きだったので、この作品もある程度、まとまったらと思っていたけど、予想以上におもしろくて、「あれ、そうだったの」というのが、いくつか散見される。
わたしも、かなり昔のアメリカ映画やイギリス映画を見ているが、感心することばかり。
おもしろい。
コミックに首までつかると、更に、字が追えない、哀しいなあ。
もひとつ、西炯子の『初恋物語』、いや、わたしが買ってるんじゃないからね、なんとなく読んだら、やめられなくなっただけ。けっこういい。『カツカレーの日』が切れ味するどくて。。。
2021年6月20日
『短編ミステリの二百年5』 editor:小森収(Komori Osamu) 創元推理文庫(Sogen Mystery bunko)
cover:柳智之 design:中村聡 2021/ 6/18 ISBN978-4-488-29906-4
- 「ある囚人の回想」 The Procurator of Justice スティーヴン・バー(Stephen Barr)translator:門野集
- 「隣人たち」 The Neighbors デイヴィッド・イーリイ(David Ely)translator:藤村裕美
- 「さよなら、フランシー」 Goodbye to Francie ロバート・トゥーイ(Robert Twohy)translator:藤村裕美
- 「臣民の自由」 The Liberty of the Subject アヴラム・デイヴィッドスン(Avram Davidson)translator:門野集
- 「破壊者たち」 The Destructors グレアム・グリーン(Graham Greene)translator:門野集
- 「いつまでも美しく」 For Ever Fair シーリア・フレムリン(Celia Fremlin)translator:直良和美
- 「フクシアのキャサリン、絶体絶命」 The Dilemma of Catherine Fuchsias リース・デイヴィス(Rhys Davies)translator:猪俣美江子
- 「不可視配給株式会社」 Intangibles Inc. ブライアン・W・オールディス(Brian W. Aldiss)translator:深町眞理子
- 「九マイルは遠すぎる」 The Nine Mile Walk ハリイ・ケメルマン(Harry Kemelman)translator:白須清美
- 「ママは願いごとをする」 Mam Makes a Wish ジェームズ・ヤッフェ(James Yaffe)translator:藤村裕美
- 「ここ掘れドーヴァー」 Dover Does Some Spadework ジョイス・ポーター(Joyce Porter)translator:直良和美
- 「青い死体」 The Muddle of the Woad ランドル・ギャレット(Randall Garrett)translator:白須清美
- 「短編ミステリの二百年」 小森収(Komori Osamu)
- 第九章 再び雑誌の時代に(承前)
- 6 「ジェラルド・カーシュ補遺」
- 7 「屹立する作家の肖像ACT2」
- 第十章 短編ミステリ黄金時代の諸侯
- 1 「正体不明の技巧派 -スティーヴン・バー」
- 2 「ハードボイルド派のタレント -J・D・マクドナルド他」
- 3 「デイヴィッド・イーリイの全貌」
- 4 「ロバート・トゥーイ1969」
- 5 「ミステリマガジン・ライター -ジェイムズ・ホールディング」
- 6 「ウェストレイクは光り輝く」
- 7 「ロバート・L・フィッシュのふたつの顔」
- 8 「ジョー・ゴアズとDKAファイル」
- 第十一章 007狂騒曲
- 1 「007登場前夜」
- 2 「短編におけるジェイムズ・ボンド」
- 3 「スパイが多すぎる」
- 4 「007ブーム下の職人作家 -マイケル・ギルバートを例に」
- 5 「狂乱ブームの残したもの」
- 第十二章 大西洋の向こう側で
- 1 「ロード・ダンセイニのミステリ短編集」
- 2 「ミステリにもっとも近いストレイトノヴェリスト -グレアム・グリーン」
- 3 「ブリティッシュ・クライムストーリイの先駆」
- 4 「規格外のアメリカ作家 -パトリシア・ハイスミス」
- 5 「イギリスのさらに周縁にて」
- 第十三章 隣接ジャンルの研究(2) -隣りのSF
- 1 「異色作家短篇集とSF」
- 2 「SF作家としてのレイ・ブラッドベリ」
- 3 「フレドリック・ブラウンのSF短編集」
- 4 「五〇年代短編SFのエース -ロバート・シェクリイ」
- 5 「P・K・ディックとミステリマガジン」
- 6 「スタージョンのミステリ作家としての顔」
- 7 「世界の中心で暴力を描いた男 -ハーラン・エリスン」
- 8 「カート・ヴォネガットJr.のころ」
- 9 「SFと諷刺小説の狭間で -ウィリアム・テン」
- 10 「ミステリマガジンのSF作家たち」
- 第十四章 パズルストーリイの命脈
- 1 「短編パズルストーリイの衰勢」
- 2 「九マイルは遠すぎる -モダン・アームチェアディテクティヴの狼煙」
- 3 「アームチェアディテクティヴの完成 -ブロンクスのママ」
- 4 「異端の本格 -ジョイス・ポーターとランドル・ギャレット」
今回の収録作品は、読んでいるのが半分くらい、少し懐かしみながら、読む。
はじめて読んだのは「臣民の自由」、おもしろいです。
やはりこの作家の作品は、も一度、読み返したいなと思いました。
解説に関して、SFのこととなると、無難な書き方になりますね。
エリスンに関して、少しだけ、たぶん出会い方ではないかと思います。おそらくたっぷりと和物SFを読んできた人たちには、今読んでも、それほどのインパクトは受けないように思います。
自分にとっては、「ボーイ・ミーツ・ガール」みたいなもので、ぶつかったインパクトが大きすぎたんですよね。奥底にしまい込んだ、そのインパクトを繰り返し味わいたい、それがあります。
作品に関しては、確かに振幅の幅がありすぎて、たまに戸惑いましたけどね。
今回もいろいろと見直しをさせていただきました。
それと、ありがとうございました。
2021年6月17日
遅くなりましたが、中原尚哉様、翻訳大賞受賞おめでとうございます。
はじめて読んだのは、あの懐かしいダーコーヴァのシリーズの、『ドライ・タウンの虜囚』 Shattered Chain マリオン・ジマー・ブラッドリー(Marion Zimmer Bradley)でした。
今となってはなんてことない異世界ものになってしまいましたが、手元に残っておらず、も一度読みたいシリーズでもあります。
描写が印象的な『シャドウアイズ』 Shadoweyes キャスリン・プタセク(Kathryn Ptacek)
売れなかったと思えるけど、わりとよかった『太陽と月のアラベスク』 Strange Devices of the Sun and Moon リサ・ゴールドスタイン(Lisa Goldstein)
ヒューゴー賞受賞作、なんとなく訳者名を記憶した『遠き神々の炎』 A Fire Upon the Deep ヴァーナー・ヴィンジ(Vernor Vinge)
名作ではないが、台風の襲い方が印象的な『大暴風』 Mother of Storms ジョン・バーンズ(John Barnes)
こういう作品が訳されて、売れるのかな?と思った『聖なる血』 The Blood of the Lamb トマス・F・モンテレオーニ(Thomas F. Monteleone)
もう一度、読みたいこれ、『アヴァロンの戦塵』 Beowulf's Children ラリー・ニーヴン(Larry Niven)/ジェリー・パーネル(Jerry Pournelle)/スティーヴン・バーンズ(Steven Barnes)
もっているんですけどね。余裕が。
出世作かな、『タイム・シップ』 The Time Ship スティーヴン・バクスター(Stephen Baxter)
B級SF、いやほんと、よく訳しましたね、すばらしい『氷河期を乗りきれ』 Earth Winter リチャード・モラン(Richard Moran)
相性が悪いのか、わたしはよくわからない『飛翔せよ、閃光の虚空へ!』 Priary Inversion キャサリン・アサロ(Catherine Asaro)
さらに、よくわからない『クリプトノミコン』 Cryptonomicon ニール・スティーヴンスン(Neal Stephenson)
極めつけはこの二冊、うーんと理解の範囲外、『不在の鳥は霧の彼方へ飛ぶ』 The Impossible Bird パトリック・オリアリー(Patrick O'Leary)
たぶん出世作、『啓示空間』 Revelation Space アレステア・レナルズ(Alastair Reynolds)
どんどん厚くなる本に、ドキドキしながらお待ちしてました。
何をどうして、これが本国で売れるんだと思った『碧空の城砦』 Gardens of the Moon スティーヴン・エリクスン(Steven Erikson)
あまりにもおもしろくないので、あらぬ疑いを持った次第。訳者が悪いわけではないと確信してます。
訳者の力が大きいような気がしている『海軍士官クリス・ロングナイフ』 Kris Longknife: Mutineer マイク・シェパード(Mike Shepherd)
あとは有名どころを訳しつつ、安定した翻訳者だなと感じております。プレッシャーを与えつつ、「わたし」を「弊機」と思い切った訳、様々な武器の思い切った意訳、まさしく現在のSF翻訳者の先端のおひとりでございます。
敬意を込めて。
素敵な翻訳者になりましたね。
2021年6月15日
ロバート・シルヴァーバーグ(Robert Silverberg)、『小惑星ハイジャック』 One of Our Asteroids is Missing (1964)、Pen Name:キャルヴィン・M・ノックス(Calvin M. Knox)
創元SF文庫
また、懐かしいものを伊藤典夫訳で読めるとは思わなかった。
作品自体は、他愛もない内容で、でもまあ、娯楽として読むには適しているし、読んでも読まなくてもどちらでもかまわないわけで、自然とページを開いて、古き良き宇宙を楽しみながら、さしづめ、B級作品を楽しむごとくのんびりと。
構えて読まなくていいわけで、これは名作の声高い傑作だから、気合を入れなければという代物ではない。そんな作品が、わたしは好きです。
この作品から三年後に、改造されて戻ってきた主人公、百人の母親になった娘、感情を食らうことによって快楽を得る男、『いばらの旅路』
さらに、千年後からやってきたという男は、本物か、それとも詐欺師か、神の子か、観光客か、世界は新たな混乱に巻き込まれる、『時の仮面』
ニューシルヴァーバーグになる前の作品も、けっして飽きさせないテクニックはあるわけで、貧乏なSF作家たちの中から、金持ちになったおひとりであるが、今はどうか知らないけど、どうもSFというと貧乏というイメージが個人的にまとわりつくが、そんな作家のひとりに対しての多少のやっかみもあるかもしれない揶揄さを差し引いても、プロとして輝くものを持っている。
社員、失礼、「シャイン」
2021年6月11日
5月31日でSSL証明書が失効されるのは、メールで連絡は来ていたが、完全に失念していた。
6月1日、仕事で出勤、昼休みに確認を取ると、「なんじゃ、こりゃ」である。そのときに証明書のことを思い出す。6月2日の水曜日が休みだったので、作業開始。
仕事が終わってからでは、とてもじゃないけど、気力が維持できないので、休みの日にしかできない。
支払いもすまして、申請して、さて、これで準備OKなんだが、最初に導入したことなんて、さっぱり抜け落ちているというか、忘れている。
改めて、もう一度勉強。
設定などを行わないと、証明書は来ないのだが、しばらく待っても来ない。そりゃそうだ。設定を間違えているのだから、原因がわからぬので、サポートに連絡して、そこで間違いに気づく。
なんとか復旧が一週間後、正直いうと、SSL証明書など必要ないと言えば、ないのだが、少なくとも、安全への留意。
しかし、一週間は短いようで、長かったので、かなり利用者を減少させたようである。
サイト運営は大変である。
2021年5月30日
『一度きりの大泉の話』 萩尾望都 河出書房新社
少女マンガは読まず、どこがいいのか、さっぱりわからず(というか、読んでいなかった)、石ノ森章太郎の「龍神沼」とか赤塚不二夫の『秘密のアッコちゃん』、横山光輝の『魔法使いサリー』というアニメにもなった有名どころは知っている。しかしだ、当時の男子中高生は、少女マンガを読んでいると、ほぼ「変態扱い」されたはずである。
現代のようなジェンダーフリーとか、LGBTなどはありえなく昭和の真っ只中である。
マンガなど描いていていると、必ず親は、なにがなんでも大学行っとけ~という時代である。それは、『一度きりの…』にも、そんな部分が出てくる。
漫画家になりたかったが、才能の欠片もなく、絵も下手、根性は無く、話作りもできない、こんな奴は漫画家になれないと、親は思ったのだろう、行けるんなら大学行けと、で、行けたので酒にはまって、4年間を無駄(いや、得難い体験をして、今がある)あげく、商社、IT、介護と変遷はするものの、なんとかなっているのは、たぶん大学時代の4年間の美術研究会の仲間と活動のお陰である。
それと、中野区大和町で商売をしていて、そこそこ成功していた祖父と父、母のお陰だろう。
当時、高円寺以西は、かなり田舎だった。
祖父によると、早稲田通りから南は焼夷弾で丸焼けになった。北側も現在の新青梅街道の当たりも焼けてしまった。荻窪と西荻窪の間、前は日産自動車、現在は原っぱ公園のところに中島飛行機があった。
3月10日の東京大空襲で、下町だけでなく山の手もかなりな痛手を受けた。
そこから完成した飛行機を隠すための掩体壕が西の方には点在し、戦後、「独活(うど)」が作られた。
まだまだ昭和40年代は空地が点在し、畑が多く、土の道が埃を舞い上げ、いずれ補装予定のところは砂利道で、環七は突貫工事で作られ、駅前には街頭テレビが存在し、高円寺と荻窪にはあった、鬱蒼と生い茂るけやきの森があった。
「大泉学園」となると、わたしの中では、車で生きたくない街のナンバーワンである。ややこしいと言われる世田谷よりもひどいと思う。世田谷で送迎運転をしていた身からすると、わかりにくいのは確かだが、まだ畑のあぜ道や農道を利用して小刻みに売った土地のせいで、道が狭いだけ。しかし大泉は西武新宿線をはさんで、複雑怪奇に入り組んでいる。狭い、ややこしい、それに線路があるため、なぜか方向感覚が狂うのである。行っていないから道を覚えていないといわれりゃ、その通りだが、子どものころの大泉はけっこうな田舎だった。配達で、父の車に乗りながら、小学生の頃から手伝わされて、杉並、練馬、中野、新宿、世田谷まで行っていた。
漫画家は、金がないから、田舎に暮らす、いや、都会に暮らす必要はなく通勤することもないので、交通が多少不便でもなんともなかった。当時、自転車も貴重品で、そもそも泥の道では役にたたない。
関東ローム層をなめると痛いめに合う。乾くと埃、塗れるとすべりやすいという代物である。
さて、大人たちの都合で、男性作家の「トキワ荘」、女性作家の「大泉サロン」という新たな商売のタネに喰いつこうとする人々のせいで、多分に振り回され、書かずにいられなくなったのだろう。
若ければ、「んなもん、書けるか」だけど、年齢とともになんらかの記憶として残しておくべきではないかとも思われたようにも感じる。
二つの天才、その恒星の光に導きかれたあまたの星々、あまりにも天才すぎるため、その作風にも影響しあい、結局は離れざるを得なくなった。
「トキワ荘」のようにひとつの巨星ならば、なんとかまとまれたのかもしれないが、あまりにも年齢近く、持っている素質も似ているならば、それは相容れなくなるのは必然ではないのかと思う。
しかし、当時の編集者の影響が大きいのは、諸々の作家の本を読んで知っていたが、新しい世界を作るのは、とても一人では無理なんだろうな。
敬愛する米澤嘉博氏の『戦後少女マンガ史』には、どう書いてあったっけと疑問に思い、探すが見つからず。
米澤嘉博氏の各著作があったればこそ、このサイトも続いています。
創作するということは、現実への影響を免れ得ない因果な商売なんだ、が、第一印象だった。
2021年5月21日
『魔軍跳梁 赤江瀑アラベスク2』創元推理文庫 2021/4/28 赤江瀑
三冊並べると、後半の赤江瀑の作品を俯瞰できるような作品集になっているように考える。まだ二冊めですけど。
初期の名作は、比較的、手に入りやすいし、改めて、この作家を紹介しようとするならば、一工夫の必要はあると思えるし、従来のファンにもアピールできるものというのも、また難しい。
けど、読んでみると、ひとつの方向性をなんとなく感じられる。
こういう作品も書いていたんだという軽い驚きも感じられた。
京都弁で作品を書ける作家であるけれど、東京人として、実にうらやましい。
ふと、思い出したのは、京都、山科へ、商売しに行ったとき、赤江瀑の作品を読んで勉強していたのである。
福知山での短篇集を読んだホテルの夜は、なんとも感慨深いものに感じられる。
座布団に注意しろ、とかぶぶちゃに注意しろとか、周りには脅されたけれど、同じ人間同士、方言、習慣だけでなく、魂で語れば理解できるはずだ、と思っていた。
好きな理由は、言葉だけではない部分にもある。
でも、ええなあ。
2021年5月15日
うらやましいなと、思うことがある。
もう少し早く生まれてくれば、とか、もう少し遅く生まれてくればとか、どちらかというと、「早く生まれていれば」と思うほうが多いのかもしれない。
1958年生まれは「はざま」の世代とか言われていて、どちらかというと、不遇なんだと思い込んでいたが、けしてそんなことのない世代だったのかなと思われる。
先人たちの苦労を思うと、そこに居たら、「よかったのに」と思う。
自分の親の世代の物語を読むたびに、戦争というゴタゴタと不毛な生活と苦難、飢饉と戦後の復興の、がむしゃらに突き進むものに魅力を覚えた。が、昭和6年生まれの父は早々に亡くなり、昭和10年生まれの母が残り、昭和20年生まれの叔母がおり、戦後の苦労をしたこの世代の繋がりに驚きながらもうらやましさを感じるときもある。
内風呂もなく、食品も添加物まみれ、何を食わされてるか、何を飲まされているのか、わからないまま、明るい未来だけを信じていた時代。
当人たちは、未来のことはわからない。ドラマではないのだから、未来はわからない。
今、コロナという災厄の不遇の中にいて、未来はあるのかと問うことは可能なのか。国の首長が、輝かしい未来を信じて歩んできた、挫折感に乏しい人物に任せていいとは思えない。
数年先の未来を語れる、来年の状況を語れる人物に変えるべきである。
年齢には関係なく未来を語るリーダーが必要だ。苦難を乗り越えられるのは、そんな型破りな人物であるべきだろう。
北上次郎/日下三蔵/杉江松恋編集の『日本ハードボイルド全集』生島治郎が出た。
- 『死者だけが血を流す』
- 「チャイナタウン・ブルース」
- 「淋しがりやのキング」
- 「甘い汁」
- 「血が足りない」
- 「夜も昼も」
- 「浪漫渡世」
生島治郎は『黄土の奔流』『片翼だけの天使』しか読んでなかった。
豚毛を買いにいく『黄土の奔流』は傑作だが、『片翼だけの天使』では、なんというか生き方が違いすぎて、このひとは理解できないなと思ったものだ。
もともと、ハードボイルドが苦手で、何かしら事件は起きるが、事件の解決よりも主人公の行動、モラル、プライドが優先されるということが、まず理解できなかった。
きわめて小市民的な発想しかできない自分にとっては、宇宙人である。それをおもしろいと理解する思考が無理。それで長い間、読まなかったというか、読んではいるのだが、「つまらない」という決めつけで終わっていた。
チャンドラーの短編もあらかた読んでるし、長篇も代表的なものは読んでる。ハメットも同じ。
しかし、マっギヴァーンとかスピレーンになると、実によくわかる。たぶん頭の構造が単純なのだろう。
『死者だけが血を流す』は、いかにも昭和の時代の展開で、モラルもなにもかも昭和、しかしながらパワーを感じる。
ああ、こういう壁があちこちにあると感じられたのが、昭和だっけと懐かしく思い出す。
「チャイナタウン・ブルース」「淋しがりやのキング」は、好きだ。
「甘い汁」は、異色ものという作品、「浪漫渡世」は早川書房の内幕もの。明け透けにかいてあり、『浪漫疾風録』まで読んでしまいました。
読んでなかったのを思い出して、いずれ読もうというリストにははいっていたけど、まったく忘れていた。
この作品を読めたのは収穫。
全集、全7巻、あの作家がないなとか、ふと思うが、売れれば第二期もあるんだろうと思ってる。
もう少し早く生まれればと思うものの、おそらくは、今までしてきた苦労や苦難と違うものがのしかかる。どの時代で生きたとしても思うようにならないだろうなと。
2021年5月9日
リサ・タトル(Lisa Tuttle)
懐かしい名前である。短編は訳されているのだけど、長篇になると、ほぼはじめて。
『翼人の掟』は文庫化もされなかった。SFというより、ファンタジーだし、マーティンの名をもってしても再刊するのは、少ししんどかったか。内容的には古くなってしまったのは、致し方ないが、個人的な思い入れとしては復刊してほしいかな。
短編は、ほぼホラーばかり。
「妻たち」とか「虫の家」は、気持ち悪かった。
今回、出たのは『夢遊病者と消えた霊能者の奇妙な事件 探偵ジェスパーソン&レーン』 The Curious Affair of the Somnambulist and the Psychic Thief (2016)
translator:金井 真弓 Publisher:新紀元社 2021/ 3 ISBN978-4-7753-1856-0
雑誌「幻想と怪奇」の出版社だけど、この明細もまだできていません。すいません。他にやることが膨大に多すぎて。
内容はヴィクトリア朝のイギリスが舞台。ロンドンというと霧。映画の『メアリーの総て』の霧が印象深い。いかにも何か出てきそうだし、そうした街で何かが起きるのもありかと思えてしまう。
作品の方は、この出版社の叢書の最初の一作品めだけど、内容的には、この時代が好きなひとだったらいいのではないかと思う。
わたしは、時代的には好きなのだけど、こうしたファンタジーは苦手なのである。
『ハコヅメ 交番女子の逆襲』三巻まで読み放題だったので、何気に読みはじめたら、はまった。「モーニング」連載中のコミックである。
最初の頃は、絵も致命的なほどへたくそだったけど、あっという間に絵もストーリーもうまくなった。少しづつではなくて、怖ろしいほどのスピードで進歩してる。感心してしまった。
テレビドラマ化になるから読んだのではなくて、たまたまである。いや、おもしろい。
お巡りさんも大変だよねと、つくづく思う。上も下も大変だ。上になるほど楽になる会社は、やはりどこかおかしいのである。
2021年5月1日
『最終人類』 The Last Human ザック・ジョーダン(Zack Jordan)translator:中原尚哉(Nakhara Naoya) Publisher:ハヤカワ文庫SF2320
2021/ 3 ISBN978-4-15-012320-8 ISBN978-4-15-012321-5
出だしは、たったひとり残った人類の女の子で、ウィドウ族に育てられたわけで、よくある青春アニメ風の展開かと思われたが、なにやらネットワークも、なんかわかりにくい。
読み進めていくうちに、上巻の後半でピタリと止まる。
なんとしてでも読んでやろうという気力がそがれる。
信頼ある中原訳ではあるが、イメージがつかみにくい。悪戦苦闘しつつ、下巻へ、
すごい展開になりそうなガジェットも捨て去りつつ、物語はあらぬ方向へ突き進んでいく。
オブザーバー類の話し言葉がなんやら、そぐわないなあと思いつつも、話がよれてるよねと思いつつも、読み終わると、「なんだ、これは」と思う。
新人作家の若書きなのは間違いないが、なんとも、その無茶苦茶なパワーだけでこねくり回し、なんとか形になったんだろうけど、惜しい。
中間部分が、わりと苦痛で、ここで挫折する可能性が高い。
おそらく、悪い奴は悪い、正しい奴は正しいということを書きたかったようである。
傑作とは言わないが、まあ、佳作ぐらいにはなるように思う。
でもね、その中間部分をカットすると、これまた物語はつまらないものになるように思う。
良い評価をしようと思えば良くなるし、悪い評価をしようとすれば、どこまでも悪くなるという、作品である。
2021年4月24日
久々に「ポリシー違反」のご連絡が。
全面広告というか、自動広告を取り入れてたのだけど、スクリプトひとつなので、単純にサイト全体にばらまいたわけだけど、過去、ポリシー違反に引っかかったページにも貼り付けてしまった。
それで、ポリシー違反のご連絡。
けど、内容については言えないが、こんなことでポリシー違反になるのかいという程度。だから忘れていた。
ようやく少し戻しはじめたんだけど、つまんないことで引っかかった。しょうがない。訂正して対応した。
に、してもグーグルのポリシー違反はわかりやすいが、まったく弁解を効かない仕組みも唖然だが、現在のコロナ禍、政治家の迷走は、まったく、よくわからない。
庶民の暮らしを理解してないでしょ。日本の〇善者の、あ、いや為政者の皆さん、やらなきゃいけないのはオリンピック・パラリンピックの中止と、ワクチンを早くすること、人々の生活を安定させて、その上で景気高揚で開催というのならわかるが、もう、〇カ。
将来、未来から見た人たちは、この惨状を、どう評価するか、政治がアホだから、日本は沈没したと言われないようにしましょうよ。
地理的に沈没じゃないよ、政治的に沈没なんだよ。哀しいね。日本。軽蔑されるね、日本。極悪人にされるのは誰なんでしょう。
ケン・リュウ(Ken Liu)の最新短篇集『宇宙の春』を読む。
- 「宇宙の春」 Cosmic Spring (2018)
- 「マクスウェルの悪魔」 Maxwell's Demon (F&SF 2012/ 1&2)
- 「ブックセイヴァ」 BookSavr (F&SF 2019/ 9&10)
- 「思いと祈り」 Thoughts and Prayers (Slate 2019/ 1/26)
- 「切り取り」 Cutting (Electric Velocipede 2012/ 7 No.24)
- 「充実した時間」 Quality Time (Robots vs. Fairies 2018)
- 「灰色の兎、深紅の牝馬、漆黒の豹」 Grey Rabbit, Crimson Mare, Coal Leopard (2020)
- 「メッセージ」 The Message (Interzone 2012/ 9&10 No.242)
- 「古生代で老後を過ごしましょう」 Golden Years in the Paleozoic (Andromeda Spaceways Inflight Magazine 2011/ 9 No.52
- 「歴史を終わらせた男 -ドキュメンタリー」 The Man Who Ended History: a Documentary (Panverse Three 2011)
全体的に小粒だなと思ってたんだよね、最後の一篇を読むまでは。
いわゆる問題作であり、こんな作品が残っていたのかという驚きもある。
いや、なかなか、
映画化されるにあたって、残された作品を集めただけと思ったんだけど、びっくりしました。
ということで、未来から見た時に、どう評価されるかの視点が乏しいのが、日本人の特性なのか、いまやっていることは、非難されることしかしていないように思える。
この作品を読んで、考えてほしいものだ。どう考えるのか、偽〇者、いや為政者に読ませてみたいもんだ。
どっかの都知事と、どっかの国の総理は、「関係ない」と言いそうだけど、想像力の欠片もない対応だよね。
2021年4月18日
『中国・アメリカ 謎SF』editor/translator:柴田元幸(Shibata Motoyuki)/小島敬太(Kojima Keita) 白水社
2021/ 2/10 ISBN978-4-560-09799-1
cover/illustration:きたしまたくや design:緒方修一
- 「まえがき」 柴田元幸(Shibata Motoyuki)
- 「マーおばさん」 马姨 ShakeSpace(遥控(ヤオ コン))1977-
- 「曖昧機械―試験問題」 Ambiguity Machines: an Examination ヴァンダナ・シン(Vandana Singh)
- 「焼肉プラネット」 烤肉自助星 梁清散(リャン チンサン)1982-
- 「深海巨大症」 Abyssal Gigantism ブリジェット・チャオ・クラーキン(Bridget Chiao Clerkin)
- 「改良人類」 改良人类 王諾諾(ワン ヌオヌオ)1991-
- 「降下物」 Fallout マデリン・キアリン(Madeline Kearin)
- 「猫が夜中に集まる理由」 为什么猫咪要在深夜开会 王諾諾(ワン ヌオヌオ)
- 「対談 柴田元幸(Shibata Motoyuki)×小島敬太(Kojima Keita) <謎SF>が照らし出すもの」
偶然、本屋で見て、購入した。調べていても、なんとなく頭から抜け落ちる作品もある。
なんという題をつけるんだと思ったのだが、収録された作品を読むとそうとしか言いきれないかな、と。
テーマ別でもなければ、作品に有機的な関連性もない、選者たちが、眼についた作品を並べただけなんだろうけど、それに意味を持たせようとするのは無理がある。
苦肉の策で『謎』としたというところなのかなあと思う。
中国対西洋という対比でも、作品内容敵に、どちらに軍配があがるわけでもない。
個人的に気に入ったのは「マーおばさん」と「焼肉プラネット」。
「改良人類」など話題になるというか、深読みできるのは確かだけど。社会的なものを扱うより「深海巨大症」のような曖昧模糊としたほうが、いい。
あくまでも個人の見解だけど、
カルビが飛び跳ねている図が、どうにも頭を離れず、困っているのだが。珍しい食SFの「焼肉プラネット」。
オチは、使い古されたアイデアで、思わず、溜息が出てしまったけど、こんなもんにしてしまうのか、と。
が、イメージが勝った。おもしろい。
2021年4月16日
最近、骨伝導イヤホンを購入してみました。
もともと耳ダレの多い方なので、きれいにすることをいつも注意していて、イヤホンタイプだと、どうしても汚れるような気がして、過去、清掃を繰り返し、何回も変えてきた。
骨伝導そのものは、知られていたようだけど、機器になったのは最近。
第二次大戦中の戦車に使われていたけど、ガルパンでもおなじみの咽喉でマイクを抑えて通信するという咽喉マイクも一種の骨伝導利用なようにも感じられる。
四号戦車もいいが、三号突撃砲のシンプルなスタイルが抜群。プラモデルは購入済みで、あとは作る時間を見つけるだけ。
それが、眼についたので、購入。
いい。耳の穴を塞がないのがいい。音漏れも少ない。まったくないわけじゃないけど、気にならない。
老人性難聴になりつつあるけど、これも対応策になるなあと思いつつ、補聴器は高いんだよねえ。耳の形状に合わせるカスタマイズをすると相当な金額になるし、これでも充分だよねと思える。
耳ダレが気になって、補聴器はイヤだなと思ってたけど、思わぬ対策を発見してしまいました。
周りの音が聞こえるのも良好。
寝ながら使うには適しているものと適してないものがある。スポーツしながら音楽をというのが基本コンセプトだが、わたしゃ寝ながら聞くというのが基本、なかなか適当なものがなかったが、これはいけるかなというのを購入。
気に入ってます。
技術の進歩は、ひたひたと押し寄せているのですね。
と、いうことで『謎SF』は、明後日のお題になります。
アドセンスの設定を変えたら、なんとなく気に入らない。けど、大事な収入源なので、ご理解をよろしくお願い致します。
2021年4月10日
本です。『伝説の艦隊2 〈ウォリアー〉』 ニック・ウェブ(Nick Webb) ハヤカワ文庫SF 2021/ 2/17
少し間が空きましたが、二巻目です。
どう考えても『ギャラクティカ』の展開で、これも誰がスパイなのかの攻防戦。でも、なかなか良い感じで構成してる。期待は持てるかなというところ。
映画『fukushima 50』を見たんですけど、美談になっているよねと思いつつ、当時の首相を悪者にしているのだが、なんというか、これでいいのかと思った次第、東電の責任よりも政府が悪いんだという感じを拭いされない。
で、HBOドラマ『チェルノブイリ』を見てしまいました。
『チェルノブイリ』の場合、ドラマでもきっちり、原因は何か、が追及されている。東電、福島の場合は想定外の津波はあったのは確かだが、なぜ、その程度で抑えてしまった理由まで、つきつめている姿勢がない。どうせならば、関係者に聴取し、「映画だから、いまここで、世界に我々の考え方を伝えるべき」という説得もなく、「起ってしまった」というニュアンスは許せない。
起ってしまったことに対して、どう努力したか、だけで終わらせるのは惜しい。
あと一歩、あと一歩という「突っ込み」がない。
リスク管理の基本は、「それでいいのか」ではないのでしょうか。
作りての自己満足で終わるのでしたら、勿体ないです。
もう一歩、あと一歩、それが作りてに課せられた宿命ではないですか。
桜を見て、満足できるわけではありません。
日本人の悪い癖が出たような気がします。チームでひとつの可能性を追い求めるのを苦手とする国民性、ひとつのアイデンティティーに頼りきる部分が、感じられてしまう。
日本のドラマや、映画に、言いようのない不満を感じるのは、底まで考えていないようなところを見いだされるからなのですが。
それはそれでいい部分も確かにあるが、どこか納得しきれない。
2021年4月3日
最近は電子ブックで読むことが多くなりつつある。今回は、「あ、良かった」と思ったのはイラスト、色付きなんだよね、思わず申し訳ないけど書店で実物を確認してしまいました。
『この地獄の片隅に -パワードスーツSF傑作選』 Armored (2012)editor:J・J・アダムズ(John Joseph Adams)
translator:中原尚哉 Publisher:創元SFブンコSF-ン-10-2
cover/illustration:加藤直之 design:岩郷重力+W.I commentary:岡部いさく 2021/ 3/12 ISBN978-4-488-77202-4
- 「この地獄の片隅に」 Hel's Half-Acre ジャック・キャンベル(Jack Campbell)
- 「深海採集船コッペリア号」 The Last Run of the Coppelia ジュヌヴィエーヴ・ヴァレンタイン(Genevieve Valentine)
- 「ノマド」 Nomad カリン・ロワチー(Karin Lowachee)
- 「アーマーの恋の物語」 Power Armor: A Love Story デヴィッド・バー・カートリー(David Barr Kirtley)
- 「ケリー盗賊団の最期」 The Last Days of the Kelly Gang デイヴィッド・D・レヴァイン(David D. Levine)
- 「外傷ポッド」 Trauma Pod アレステア・レナルズ(Alastair Reynolds)
- 「密猟者」 The Poacher ウェンディ・N・ワグナー(Wendy N. Wagner)&ジャック・ワグナー(Jak Wagner)
- 「ドン・キホーテ」 Don Quixote キャリー・ヴォーン(Carrie Vaughn)
- 「天国と地獄の星」 Find Heaven and Hell in the Smallest Things サイモン・R・グリーン(Simon R. Green)
- 「所有権の移転」 Transfer of Ownership クリスティ・ヤント(Christie Yant)
- 「N体問題」The N-Body Solution ショーン・ウィリアムズ(Sean Williams)
- 「猫のパジャマ」 The Cat's Pajamas ジャック・マクデヴィット(Jack McDevitt)
パワードスーツのアンソロジーである。いろいろ趣向を凝らしており、視点は人間側、もしくはスーツ側、未来、過去のスチームパンク風に、ちょっとほんわか系まで、ある。
なかなか良い作品が揃っており、特に作家ごとの作風がいかにもというイメージで書かれているのがおもしろい。
楽しませていただきました。
しかし、一部抜粋であると読み、じゃオリジナルは何があるのと疑問が湧く。信頼できる中原尚哉氏のセレクトに疑問を持つわけではないが、アンソロジーは並んだ順番にも意味がある。
ということで、原書は下記の順番。
- 「Foreword」 オースン・スコット・カード(Orson Scott Card)
- 「Introduction」 (John Joseph Adams)
- 「The Johnson Maneuver」 (Ian Douglas)
- 「この地獄の片隅に」 Hel's Half-Acre ジャック・キャンベル(Jack Campbell)
- 「Jungle Walkers」 (David Klecha) & トバイアス・S・バッケル(Tobias S. Buckell)
- 「深海採集船コッペリア号」 The Last Run of the Coppelia ジュヌヴィエーヴ・ヴァレンタイン(Genevieve Valentine)
- 「Death Reported of Last Surviving Veteran of Great War」 ダン・アブネット(Dan Abnett)
- 「猫のパジャマ」 The Cat's Pajamas ジャック・マクデヴィット(Jack McDevitt)
- 「天国と地獄の星」 Find Heaven and Hell in the Smallest Things サイモン・R・グリーン(Simon R. Green)
- 「アーマーの恋の物語」 Power Armor: A Love Story デヴィッド・バー・カートリー(David Barr Kirtley)
- 「ケリー盗賊団の最期」 The Last Days of the Kelly Gang デイヴィッド・D・レヴァイン(David D. Levine)
- 「Field Test」 マイケル・A・スタックポール(Michael A. Stackpole)
- 「外傷ポッド」 Trauma Pod アレステア・レナルズ(Alastair Reynolds)
- 「Contained Vacuum」 デイヴィッド・シャーマン(David Sherman)
- 「You Do What You Do」 タニア・ハフ(Tanya Huff)
- 「ノマド」 Nomad カリン・ロワチー(Karin Lowachee)
- 「Human Error」 (John Jackson Miller)
- 「所有権の移転」 Transfer of Ownership クリスティ・ヤント(Christie Yant)
- 「Heuristic Algorithm and Reasoning Response Engine」 (Ethan Skarstedt) & ブランドン・サンダースン(Brandon Sanderson)
- 「ドン・キホーテ」 Don Quixote キャリー・ヴォーン(Carrie Vaughn)
- 「密猟者」 The Poacher ウェンディ・N・ワグナー(Wendy N. Wagner)&ジャック・ワグナー(Jak Wagner)
- 「The Green」 ローレン・ビュークス(Lauren Beukes)
- 「Sticks and Stones」 ロバート・ブートナー(Robert Buettner)
- 「Helmet」 ダニエル・H・ウィルソン(Daniel H. Wilson)
- 「N体問題」The N-Body Solution ショーン・ウィリアムズ(Sean Williams)
カードの序文を読んでみたいな、ちょっと違うような気もする。
ほのぼの系の「猫のパジャマ」をラストに持ってきていたが、原書では序盤、いいなと思った「天国と地獄の星」の前なのねと、赤いドレスも印象的な「アーマーの恋の物語」。
こんな作家だっけと思ったロワチーとショーン・ウィリアムズ。
わりと「ドン・キホーテ」が好み。
ジャック・キャンベルはらしくていい。
未訳の中で気になるのは、ロバート・ブートナー、どんなの書いたんだろうかと。
中原尚哉様、今年はすごい勢いで訳書が出そうで、びっくりしてます。
2021年3月27日
『十日間の不思議』 Ten Day's Wonder エラリイ・クイーン(Ellery Queen)
ライツヴィル三作目で、最高傑作と言う方もおられる作品である。
むかし読んでたはずだけどと思うが、新訳版で読み始めると、一気に引き込まれた。いや、昔は何を読んでたんだと反省しきり。
「後期クイーン問題」とかは避けてしまおう、単純に、完璧な探偵が、この作品で穢されたのだと感じた。
前二作も、そういう作品だったが、ここで加速したようだ。
読んだ結果、ああ、いろいろ考えられる作品なのは間違いないが、どことなく底辺にある宗教色を感じるところから、「穢す」という表現にした。
失敗と言えば言えるが、失敗ではなく、何か違う色合いのものを感じた。
日本では、宗教的な扱いは難しく、民族的な背景にはなかなかなりえないが、例えば「社会問題」「家族問題」「異様な犯人像」「異質な動機」「問題ある犯罪」等々に、この「穢れ」は変化していったように思われる。
傑作、問題作と言われるのも、よくわかるが、エラリイ・クイーンというと、純白なイメージが個人的には持っていた。
だから汚されるようなイメージを感じたんだと思う。
改めて読めてよかった。こんな傑作を忘れているなどとは…
2021年3月20日
『フレドリック・ブラウンSF短編全集』 フレドリック・ブラウン(Fredric Brown)
全4巻が揃った。
一巻目が出たのが、一昨年になるのか、早いものだって、この一年くらいは、かたつむりの歩みぐらいにしか感じられなかったのだが。
ストレスで、いまだに胃は痛いは、足はむくむわで、苦労は絶えないが、新しい仕事で、すこしばかり身体を使うようになって、体力的に元に戻りつつあるようだけど、寄る年波に勝てず、回復力がにぶい。
ヨレヨレしながら、なんとかやっている状態。しかし、読んでいる。
ファンになったきっかけの作家で、一巻目から読み通してみた。
傑作と愚作の振幅の幅があまり大きくなく、それほど違和感なく、読めるのが、驚く。くだらないなと思うアイデアでさえ、傑作の間にあっても、なんとなく存在感を感じさせる。
これ、作者が気負いなく書いているからなのではないかと思う。
このアイデアは傑作だ、とか、こいつは秀作だとかの力を入れず、書いたら、良くなっていたとか、書いたら、こんな出来になってしまったということなんじゃないかと思う。
ダジャレが多いだとか、「なに、これ」も確かにあるが、傑作との落差が少ない。才能なんだろうな。
とっても素敵。
『J・G・バラード短編全集』 J・G・バラード(J. G. Ballard)、『カート・ヴォネガット全短篇』 カート・ヴォネガット(Kurt Vonnegut)、と、いっしょに見つめながら、いいなあと思うのです。
で、次は誰をまとめてくれるのか。
ゼナ・ヘンダースン(Zenna Henderson)とか、シオドア・スタージョン(Theodore Sturgeon)、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア(James Tiptree, Jr.)、ロバート・シルヴァーバーグ(Robert Silverberg)、フリッツ・ライバー(Fritz Leiber)、デーモン・ナイト(Damon Knight)、R・A・ラファティ(R. A. Lafferty)、ウィリアム・テン(William Tenn)、ロバート・シェクリイ(Robert Sheckley)
全集は無理でも、「50年代作家集」とか、「60年代作家集」とか、「80年代」から、今まではあるのだから、ほんの少し遡ってくれてもいいんだけどなあ。
2021年3月14日
『日々翻訳ざんげ エンタメ翻訳四十年』 田口俊樹を読む。
ほぼ、いっぱい読み始めた時に、訳本が出始めた。ミステリの良い読者ではないが、境界線上の作品も多い。しかし、『オルタード・カーボン』 Altered Carbon リチャード・モーガン(Richard Morgan)には、え、このひとが、と思ったものだ。
ローレンス・ブロック(Lawrence Block)は、読みたいなとずっと思っているのだが、そのまま過ぎそう。
『世界のハーモニー』 Harmony of the World チャールズ・バクスター(Charles Baxter)は、文庫化されていないけど、わたしもつくづく良いなと思ったのを懐かしく思い出します。
『神は銃弾』 God is a Bullet ボストン・テラン(Boston Teran)も読んでいるのだが、あまり記憶がない。
『パナマの仕立屋』 The Tailor of Panama ジョン・ル・カレ(John le Carré)も、読んでいない。
そうだ、思い出した、年取ったときの楽しみのひとつにル・カレがあった。『寒い国から帰ってきたスパイ』とか『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』とか、も一度読もうと思ってたんだっけ。
読むのに苦労する。翻訳されたものですら、いろいろあるのだから、それを読み解く力も必要になる。
一読、翻訳するがわにもいろいろあるわけだから、読むほうも、それなりに読解を要求されるというところでしょう。横を縦にするだけではないのだから、楽しむには、それなりのものが要求されるようにも思う。
違うと思われる方もいると思うが、完璧な訳はないのだから、想像力を働かせてくれるような訳がいいと、勝手に思っています。
けどね、こんなこと言うと、叩かれそうだが、チャンドラーは、…なのよ。
2021年3月6日
Youtubeで「うっせぇわ」を聞く。遅ればせながら、草の根ネットのMIDIからボーカロイドから、よくパソコン音源のものは聞いていたけど、曲調はボカロ。
ボカロでは、グロからエロからなんでもありなので、多少、過激なのはなんとも思わないが、声とのマッチ、声の聞きやすさはいい。
日本語はシラブルなので、節で区切る言葉なので、早いと音に乗りにくいよねとは思ってた。英語のように歌う日本語だとか、それなりの工夫はあるけど、どうなんだろうと思っていたが、初期のボカロの「初音ミクの消失」を聞いたとき、ぶっとんだね、人間はとてもじゃないけど歌えないよねと、一音に一音、ここまでくるとボカロはどうなるのかと思っていたが、それほど遠くまでは行かなかったというところか。
しかし「うっせぇわ」は、そんなに何回も聞きたくはないな。「ギラギラ」の方がいいかも。
なんとなくフレーズに80’年代の匂いがあるのは気のせいか。それとも意図か。
過激な言葉で批判しようとして、直接怒鳴られてるだけでは、なんか違う。ダブルミーニングが良いというわけではないけど、う~む。
『ゲーム・オブ・スローンズ』を第一章から第八章まで見る。
第六章から第八章までの怒涛の展開には、一気に見ると疲れる。おかげでまったく読めず、また書けず、どうも原作者にはファム・ファタール、悪女ものが多いような気もするのだが、デナーレス、竜の王女と、サーセイ(サーシイと聞こえる。)の人間界の女王との一大決戦だが、まあ、二回めなのだが、これでいいのかという感じはある。
S-Fマガジンの酒井昭伸氏のエッセイによると、まだ違うお楽しみがある。ドラマはドラマですね。
イラストレーターの佐治嘉隆氏も亡くなっていた。ブラッドベリの『火星年代記』と『太陽の黄金の林檎』が、別のイラストだったら、読むのがもっと遅かったと思う。
しかし、旧版のため、そのイラストの本はない。画像だけ掲載するわけにもいかず、わかるひとはわかるよねとしか言いようがないな。
ご冥福をお祈りいたします。
2021年2月14日
「その女、ジルバ」の池脇千鶴が凄すぎて、思わず見入ってしまう。いやー、素晴らしい、こんな演技派だっけと思う。
会社員になったのは1980年、昭和55年、その年に産まれた方が、40歳なんですね。いま、63歳になって、思う所あって、定年で引退。
40年か、しかしまだ非常勤で働くので、まだまだ続くけど、もう責任ある地位はしんどいかな、しかし権力への要求を鬼のように持っているひともいっぱいいるけど、そこまでの気力はなし。
会社員20年、いろいろあって一年、起業して10年、会社員で10年、一区切り。SFを読むぞと思うものの、いままで電車の中とかで読んでいたので、家ではなかなか読めない。困ったもんだ。
しかも家では誘惑が多すぎて、余計なことばかりしている。
『炎と血』の一巻目を読んだら、これが驚くくらい断片集、あちゃー、読めないぞ、こんな断片ばかりじゃ、整然と読むには辛すぎるぞと思う。
読み返すには辛いが、テレビドラマは見れる。第一章から再び見ている。通して見るのは、はじめてなので、いろいろ気がつくことがあったが、たぶん、読む側、見る側にも知識というか作品世界の背景を理解しておくことを強要されるようなところがあり、それが少し辛い。
特に名前は、頻出する海外名前が、覚えにくい。日本で、いまいち受けないのは、うじゃうじゃ似た名前が出てくるし、その人間関係の複雑さたるや、戦国時代かくあるし、のような煩雑さ。
たぶん日本人には戦国時代という凄い事実があって、それを紙上に、再演しようとしているように思われる。SFという名を借りて。
いっそのこと日本人の名前に翻案したら、受けるかもって、それはないな。
ともかく正編を早く書いてくだされ。
わたしは待っています。
2021年2月8日
『茶匠と探偵』 The Universe of Xuya Collection #1 アリエット・ド・ボダール(Aliette de Bodard)も候補のひとつでしたね。
落ちてました。すいません。
赤江瀑を読んだのは、1982年の講談社文庫『獣林寺妖変』、収録作品は「獣林寺妖変」「ニジンスキーの手」「禽獣の門」「殺し蜜狂い蜜」。
傑作ばかりで、ひとつひとつに驚いたことが鮮明に覚えている。
『天上天下 -赤江瀑アラベスク〈1〉』東雅夫編、創元推理文庫 F-あ-2-1 2020年12月25日 ISBN978-4-488-50504-2
収録作品、
「海峽──この水の無明の眞秀(まほ)ろば」(1983年8月)
「星踊る綺羅の鳴く川」(小説現代メフィスト 1997年9月増刊号)
「上空の城」(野性時代 1976年6月号)
エッセイ「わが街、蠱惑」「伽羅先代萩」「桃源郷の罠」
「赤江瀑インタビュー」幻想文学 2000年2月 第57号
で、構成されている。「海峡」と「上空の城」は読んではいたが、ほぼ記憶なし。最近、こんなことばかりだ。「星降る綺羅の…」は、なかなか凄い一篇。
正直言ってしまうと歌舞伎とか、能とか苦手で、はっきり言うと知識ゼロ、それでも、耽溺できる作品である。
「野性時代」角川書店の雑誌で、大判で分厚い雑誌だったけど、この頃、1976年から1980年頃、まめに読んでいた。
当時、読んだとき、「上空の城」は、おもしろいと思ったものだが、今回も傑作と思ったが、そのなんというか、展開上のストーリーが時代なのねと懐かしく思った次第、1970年代の香りがあるし、今じゃこのストーリー展開は厳しいよねと思いつつ、半世紀前のリアルを感じ取れたのが良かった。
あと、二冊、いずれ読みなおしたい作家のひとりであったけど、いいタイミングで読ませていただいた。
ありがたいことです。
2021年2月1日
今年もまた、SFベスト10の時期であります。昨年、翻訳された海外SFは、わりと話題作もあったりして、豊作だったのかなと思える。
ベスト10に選ばれるだおうなと思われるのは、
- 『宇宙(そら)へ』 メアリ・ロビネット・コワル(Mary Robinette Kowal)
- 『サイバー・ショーグン・レボリューション』 Cyber Shogun Revolution ピーター・トライアス(Peter Tieryas)
- 『歴史は不運の繰り返し -セント・メアリー歴史学研究所報告』 Just One Damned Thing After Another ジョディ・テイラー(Jodi Taylor)
- 『タイムラインの殺人者』 The Future of Another Timeline アナリー・ニューイッツ(Annalee Newitz)
- 『三体 2 -黒暗森林』 劉慈欣(Liu Cixin)
- 『ボーン・クロックス』 The Bone Clocks デイヴィッド・ミッチェル(David Mitchell)
- 『誓願』 The Testaments マーガレット・アトウッド(Margaret Atwood)
- 『アンドロメダ病原体-変異-』 The Andromeda Evolution マイクル・クライトン(Michael Crichton)&ダニエル・H・ウィルソン(Daniel Howard Wilson)
- 『空のあらゆる鳥を』 All the Birds in the Sky チャーリー・ジェーン・アンダーズ(Charlie Jane Anders) (創元海外SF叢書15)
- 『ナインフォックスの覚醒』 Ninefox Gambit ユーン・ハ・リー(Yoon Ha Lee)
- 『新キャプテン・フューチャー キャプテン・フューチャー最初の事件』 Avengers of the Moon アレン・スティール(Allen Steele)
- 『第五の季節』 The Fifth Season N・K・ジェミシン(N. K. Jemisin)
- 『時間旅行者のキャンディボックス』 The Psychology of Time Travel ケイト・マスカレナス(Kate Mascarenhas)
- 『ベストSF 2020』 editor:大森望(Ōmori Nozomi)
- 『シオンズ・フィクション -イスラエルSF傑作選』 Zion's Fiction editor:シェルドン・テイテルバウム(Sheldon Teitelbaum)/エマヌエル・ロテム(Imanuʼel Loṭem)
- 『オルガスマシン』 イアン・ワトスン(Ian Watson)
- 『荒潮』 The Waste Tide 陳楸帆(スタンリー・チェン)(Stanley Chan)
- 『月の光 -現代中国SFアンソロジー』 Broken Stars: Contemporary Chinese Science Fiction in Translation editor:ケン・リュウ(Ken Liu)
- 『メアリ・ジキルとマッド・サイエンティストの娘たち』 The Strange Case of the Alchemist's Daughter シオドラ・ゴス(Theodora Goss)
- 『黒魚都市』 Blackfish City サム・J・ミラー(Sam J. Miller)
この中でのベスト1になるとさっぱりわからない。けど、個人的にだ、昨年の年末に出た、『マーダーボット・ダイアリー』 The Murderbot Diaries マーサ・ウェルズ(Martha Wells)を、押しておこう。
『宇宙(そら)へ』は良いとは思うが、あざとさが目立つような気がする。同じように『タイムラインの殺人者』も感じる。『歴史は不運の…』もおもしろいんだけど、それほどかと思う。
『三体 2』はいまいちだったし、『ボーン・クロックス』は購入できなかった。分厚いし高いし…、読みたいんだけど、アトウッドの『誓願』も同じです。
『アンドロメダ…』の続編は、なに、これ無茶してんじゃないかというオマージュなのか、突破しようとしているのか、謎。
『空のあらゆる鳥を』もよかったんだけど、あまり覚えていない。『ナインフォックスの覚醒』も同様。
『新キャプテン・…』は、おもしろいが、この作家にはもっと、訳した方がいい作品があるはず。
『サイバー・ショーグン…』は三部作の最終巻だが、おもしろさが少しかけている。
『第五の季節』は、ああ、こういうマイノリティの物語なのはわかるが、日本人のわたし的には、ゆったりしすぎてて、物足りない。
『時間旅行者の…』はアイデアはおもしろいけど、小説かという疑問があるし、『荒潮』は、まったくおもしろく読めなくて、『月の光』は良かったけど、前のアンソロジーに比べると小粒か、『メアリ・ジキルと…』は、ふむふむ、わかるがとっちらかった感じがあるし、『黒魚都市』は、なにがおもしろいのか、さっぱりわからない。
『オルガスマシン』は復刊だし、単行本は持っているが、読んでなかった、今回読んだが、過激とは思わない。
と、いうことで、年末にでた、この二冊、『2000年代海外SF傑作選』 editor:橋本輝幸(Hashimoto Teruyuki)、『2010年代海外SF傑作選』 editor:橋本輝幸(Hashimoto Teruyuki)は、来年の評価でしょう。
韓国の作家もわりと出ているし、評判は高いのだが、触手がまったく動かなかったので読んでません。たぶん、上位に一冊は食い込んでくるでしょう。
と、いうことで、アンソロジーに期待して『シオンズ・フィクション』あたりかなと思われる。たぶん、2位か5位あたり。
けどね、どうにも宗教がらみの部分もあり、何か読み間違えてるのかなと思わないでもない作品もある。
トップはわかりませんが、『空(そら)へ』かなあ。
しかし、東京創元社と早川書房と竹書房だけなんで、河出とか白水とか、国書とか、新潮、講談あたりに凄いのがあるかもしれません、資金と気力の続くかぎり読んでみたけど、去年は本当に疲れた年だったので、かなりな読み間違いをしている可能性はあるのだけど。
2021年1月25日
『災厄の町』 Calamity Town エラリイ・クイーン(Ellery Queen)
昔、学習雑誌、小さい子向けにはあるようだけど、小学生、中学生、高校生には絶滅種らしい。その付録に、ちっこい手帳サイズの特集があった。
アブリッジされた小説とか、『怪奇はこれだ』とか『SF入門』とか、あった。その中に『トリック百科』みたいなものがあった。ミステリのトリックを集めたもので、出典は明らかにしてないけど、有名なトリックを集めたもので、何度も何度も読み返したものである。
崖に向かって、歩く足跡とか、傷跡がいっぱいあるとか、そんなのがいっぱい、子ども心に、よくわからないなあというトリックもあった。
それが、あ、これかあと思った。
トリックだけ抽出すると、「そんなもん、すぐわかるじゃん」と思っていて、「こんなのはトリックにならん」と、ずっと思っていた。
まさか、それがこの作品だとは、まったく想像もしていなかった。
本の半分近くで、ようやく事件が起きる。
それまでは、しつこいくらいの家庭の事情が書かれる。なんなんだよと、昔は思ったかもしれないけど、今は、ゆっくり読める。
いや、まあ、そうなんですね、久々にびっくりしました。
良い読者ではないミステリ読みだけど、いまさら、こんなに衝撃を受けるとは、思わなかった。
改めて思うけど、読まず嫌いは、良くない、けど、たまに読むと衝撃を受ける。
おもしろい、さて、読まず嫌いは、いくつかあるが、次は誰を読もうか。
2021年1月17日
『フォックス家の殺人』 The Murderer Is Fox エラリイ・クイーン(Ellery Queen)の新訳版が出た。
クイーンというと、あまり読んでないのは確かなんだけど、有名なライツヴィルもの、本人は読んでないと思い込んで、読み始めてみると、わりとおもしろい。あれ、こんなにおもしろかったっけと思いつつ、読了。
ふと、リストを見ると、大昔に読んでいたようだ。『十日間の不思議』は読んでいるのは間違いないが、これ、読んでたっけと首を傾げる。ネタ的には有名なトリック(と言えるのか?)なんで、たぶん読んでるんだろうけど、まったく記憶になかった。
純粋に楽しめたのは、驚きでした。若いときは、なにがなんでも読んでやろうという想いだけで、すっ飛んでいたので、少し余裕ができて行間を楽しめるようになったのかもしれない。
ちょっと読んでみようかなという気持ちにもなる。
『短編ミステリの二百年』を読んでいると、これも読んでないとか、あれも読んでないとかという気分になるので、なにかしら、読む意欲を起こさせるものでもある。
『災厄の家』を読んでないんだよね、しかし、気になるSFはいっぱいであるのに、そんなにお金はないぞ。
2021年1月12日
しかし、なぜ2月7日までの緊急事態宣言なのかなと思っていたけど、2月にオリンピック組織委員会があるのね、「抑え込んだから、さあ大丈夫です」と言いたいわけね、でもね、現状把握できないご老体ばかりが、堅い頭で考えて、理想的な姿に持っていこうとしているんだろうけど、自分もそうだけど、年齢を重ねると、理想的な姿を追い求めるのはわかるけど、あんたら国民の生活や命が掛かっているものと、自分たちのプライドを考えたときに、「どっちが大事なんですか」と聞いてみたいんですけど。
答えは、卑屈なニヤニヤ笑いか、激高した、眉毛の吊り上がった(-_-メ)で、「当たり前じゃないですか」と心にあるものと違うことを言う。
この国の政治家と言われるひとたちの哀しい性が、いつ産まれたのだろう。
「貧すれば鈍する」という諺があるが、「政治家すれば鈍する」に変えればいい。
失敗すれば、「市中引き回しのうえ、獄門さらし首」にすべきひとたちでは、ないのか。潔いという言葉を知らないのか。なぜ、こんなグズグズする国になったんだ。
『短編ミステリの二百年4』 editor:小森収(Komori Osamu) 創元推理文庫(Sogen Mystery bunko)
cover:柳智之 design:中村聡 2020/12/25 ISBN978-4-488-29905-7
今回もたっぷりの解説と良いセレクトで、読み応え充分。
解説は、読めば読むほど、いろいろ考えることもあって、どう、このリストに反映させようかと思っている。
いつもながら、素晴らしい。
遅くなりましたが、ありがとうございます。
- 「争いの夜」 Fight Night ロバート・ターナー(Robert Turner)
- 「獲物(ルート)のL」 L as in Loot ローレンス・トリート(Lawrence Treat)
- 「高速道路の殺人者」 Killer on the Turnpike ウィリアム・P・マッギヴァーン(W. P. McGivern)
- 「正義の人」 Mr. Justice ヘンリイ・スレッサー(Henry Slesar)
- 「トニーのために歌おう」 Sing a Song for Tony ジャック・リッチー(Jack Ritchie)
- 「戦争ごっこ」 The Ducker レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)
- 「淋しい場所」 The Lonesome Place オーガスト・ダーレス(August Derleth)
- 「獲物」 Prey リチャード・マシスン(Richard Matheson)
- 「家じゅうが流感にかかった夜」 The Night We All Had Grippe シャーリイ・ジャクスン(Shirley Jackson)
- 「五時四十八分発」 The Five-Forty-Eight ジョン・チーヴァー(John Cheever)
- 「その向こうは -闇」 Over there ...Darkness ウィリアム・オファレル(William O'Farrell)
- 「服従」 Man Gehorcht レスリー・アン・ブラウンリッグ(Leslie Ann Brownrigg)
- 「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」 In the Forests of Riga the Beasts Are Very Wild マージェリー・フィン・ブラウン(Margery Finn Brown)
- 「短編ミステリの二百年」小森収
- 第五章 四〇年代アメリカ作家の実力(承前)
- 6 「ハードボイルド最後の巨人」
- 7 「スピレイン旋風」
- 第六章 ハードボイルドから警察小説へ -マンハントとその周辺
- 1 「マンハントという雑誌」
- 2 「雑誌の時代のミステリ作家 -リチャード・デミング」
- 3 「マンハントのクライムストーリイ」
- 4 「エヴァン・ハンター -通俗ハードボイルドの雄」
- 5 「警察小説の隆盛」
- 6 「エド・マクベイン -五〇年代アメリカミステリの顔」
- 第七章 ヒッチコックの陽の下に -アイデアストーリイの流行とその受容」
- 1 「ヘンリイ・スレッサーとアイデアストーリイ」
- 2 「C・B・ギルフォードの場合」
- 3 「ロバート・アーサーの持ち味」
- 4 「アイデアストーリイへの傾斜」
- 5 「アイデアストーリイの雄 -ジャック・リッチー」
- 6 「スレッサー再評価のために」
- 第八章 隣接ジャンルの研究(1) -幻想と怪奇
- 1 「『怪奇小説傑作集』」
- 2 「モダンホラーへの道」
- 3 「アーカムハウスという出版社」
- 4 「パルプ作家を抜け出した男 -レイ・ブラッドベリ」
- 5 「ファンから作家へ -ロバート・ブロック」
- 6 「オーガスト・ダーレスと淋しい場所」
- 7 「奇妙なイマジネーションの発動 -チャールズ・ボーモント」
- 8 「異色作家への道 -リチャード・マシスン」
- 9 「『13のショック』のショック」
- 10 SFから遠く離れて
- 第九章 再び雑誌の時代に
- 1 「ジャック・フィニイの世界」
- 2 「「くじ」以降のシャーリイ・ジャクスン」
- 3 「不安と憂鬱がミステリに接近するとき -ジョン・チーヴァー」
- 4 「エドガー賞の殿堂(1) -「ヨットクラブ」まで」
- 5 「エドガー賞の殿堂(2) -スリックマガジンからの影響」
2021年1月6日
『万物(ばんぶつ)の尺度を求めて -メートル法を定めた子午線大計則』 The Measure of All Things ケン・オールダー(Ken Alder)
たまたま2006年発売の作品が並んだけど、読みたいなと思って、そのままになっていて、今頃、読んでいる次第。
なぜ、読みたいと思ったのか、子どもの頃に、ふと思ったメートルって何。
朝の日課は、かつおぶしを削ることだった。かつおぶし削り器で、「かしかし」と削る。薄く掻いた方がおいしい。かつおぶし削り器とはいえ、「鉋」をさかさまにした形。どうしても毎日、削っていると刃が引っ込んでしまう。そうすると、裏から刃を叩いて、調整する。一度、叩きすぎて、刃が出過ぎて、まともに削れなくなってしまった。
子ども心に「まずい」と思ったわけで、おふくろに言うと、「大工さんのとこ、行っといで」と言われる。大工さんは、家の一軒向こうのお宅で、棟梁の家だったので、当時、いなせな若い衆が出入りしていた。「もんもん」の方々が多くて、「はっぴ」を着て、とても近寄りがたかったが、恐る恐る削り器を出すと、「おお、これは出過ぎてるな」と、言って、固くはまりこんでいた「刃」を一発で取り出し、しかも砥いでくれた。その時に、大工道具を見る機会があり、とっても不思議な形の道具が多かった。置きに入りは「金尺」、しかしセンチではない。学校ではメートルを教わっていて、昔からの尺度が、さっぱりわからない。
一尺とか寸とか、なぜふたつも測り方があるの、当時、テレビで洋画が好きで見ていて、何やら、ヤードとかフィートとか、それは何。
ものの長さを図るのに、いくつも測り方がある。なぜ、どうしてなのと思う。
日本とアメリカとイギリスとが違い、「世界の国の街」を歩き回る番組を見ていると、フランスとイタリアはメートルなのか、と気づく。歴史書を紐解けば、始皇帝は度量衡を統一したとある。
基準は大切である。しかし、そのもとになったのは、どう測ったのでしょうか。
その答えが、この本だった。
しかもフランス革命下のフランス、フランスの数の数え方のややこしさは知っているけど、この国で、そのメートル(mètre)を測定した。子午線を測定し、そこからメートルを導き出したのである。
パリを起点に北はダンケルク、南はスペイン、バルセロナまで測定したのである。しかもフランス革命の真っ最中。
伊能忠敬の偉業も凄いが、まだ国内は平安であった。
革命で価値観が揺らぐなか、ただひたすら科学的真実を求めて、三角測量をしつつ旅をする。
しかも、その測定結果になにやら疑問符がつくらしい。
地味な話であるのは、間違いないが、とてもおもしろかった。いや、すべてのひと向けではない。大部であるし、長い。
それでも、良かった。真実を探す努力を忘れないようにしたいものだ。
知ったいまでは、メートルって、フランス語っぽいよねと思うなり。
2021年1月3日
あけましておめでとうございます。
早くCOVID-19の惨禍が治まりますように。
『完璧な赤 -「欲望の色」をめぐる帝国と密偵と大航海の物語』 A Perfect Red エイミー・B・グリーンフィールド(Amy Butler Greenfield)
大航海時代は、興味があり、いずれ、『大航海時代叢書』なども読みたいなと思っていた。
そんな時代の本に、この魅力的な題名の一冊があった。
かねてから疑問に思っていたのが、カリブの海賊が、金銀財宝を狙ってカリブからスペインへ向かう帆船を襲う。そして奪った金銀財宝の前で、ニタリと笑う。
しかし、マヤ文明に何十年にも渡るほどの金銀財宝があったとは思えない。南米産のトマトやらじゃがいも、それともタバコを運ぶにしても、奪うだけの価値が、どれだけあるのだろうか。
胡椒のように、わずかな量でも価値を産むものでないと、海賊行為はなりたたない。
物量を必要とするものは、簡単には奪えない。いちいち奪ったあと、沈める行為をしていたら、手間も時間もかかる。
ひょいと人間ひとりが担げて、それでも充分な価値のあるものが必要だ。一度、某社で1オンスの金の延べ棒を持たせてもらったことがあるが、その重いこと重いこと、2、3本まとめて運ぶとなると、落とすというレベルであった。
20~30キロあれば、とりあえず換金できて、少しは生活できるもの、しかも特定されにくい代物でなければならない。
そんなものがあるのかという、疑問があったが、この一冊で氷解した。
コチニールだ。
ウチワサボテンに張り付いている小さい虫だが、長く昆虫か植物かという議論もあった。それぐらいわかりにくいものらしい。
アラブで珍重される「乳香」という樹木の分泌物があるが、人間の経験則から導き出される様々な行為は、実に深いものがある。
日本では、赤というと「朱色」に近い黄色みを含むものが多いが、この天然由来の動物性色素は、「スカーレット」という赤だ。不純物の少ない赤だ。
下地に黒を塗って、赤を塗ると深みを増すとか、白を塗って、赤を塗るとはっきりした色目になるとか、学生の時に、油絵を少し書いたが、その時に教わった。
黒を下地に赤を塗るものに近いらしい。現在は、コチニールを利用したものは、伝統工芸としてしか残っていないらしい。
きんきらきんに飾り立てた部屋で、赤い衣装は、確かに目立つ。
赤は人類の求める素敵な色だ。
戦隊ものでも、赤はリーダーである。
コチニール、濡れてしまうと価値が下がるが、これなら担いで運べるだろう。
スペインとイギリスの深い因縁もここに原因があるのかもしれない。
いろいろ意味でおもしろい一冊だった。
でも文庫になっていないし、古本でしか手に入らない。けど、おもしろかった。