ameqlist 翻訳作品集成(Japanese Translation List)

2023年 日々弱弱

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2023年3月9日

大谷さん、で、雰囲気が変わってしまった。すごいなあ。ほんもののスーパースターだ。
今日は初戦、先発だそうだ。しかしプレッシャーはないのかな。

冬木糸一、『SF超入門』ダイヤモンド社。
単著の入門書は何年振りだろう。内容は、17テーマ、67冊の紹介になっている。「SF沼」というマップがついていて、この形式は懐かしい。
もともとは「ジョハリの窓」なんだろうけど、けっこうSFマニアはお好きですよね。このパターン、それと関連本。
まさに、これで、わたしはこのサイトを作ったようなものだけど。
内容紹介に徹していて、単著ならば、オールディスのような『十億年の宴』のような総花的、なおかつ日本的な、英語を言語とする諸民族よりも、日本語にするという作業が必要なSF史論的なものがあるのかなあと、少し期待していた。
海外、この場合英米であるが、ビジネスとしての捉え方を考えると、どうしても英米に偏るのは致し方なし。
マーケティング的に考えれば、無難なとこに落ち着くのだが、少し落ち着きすぎだろう。チャレンジャーとしての、各書評などをつらつら、見るにもう少し冒険してもいいのかなと思う。
葛藤があったようだが、本業が忙しいと調査や、紹介するとなると改めて読まねばならないし、その時間的制約と、心の落ち着かせ方が難しい。
わたしは、言いたいことしか言ってないけど、それがアマチュアのいいところ。
プロは大変だ。
と、いうことで、要件定義に終わってしまっているのが惜しい。個々の作品の分析で、ここから、さてどのように理論に実装させようかで終わっているんだけど、ほんの少しでもいいから、SF史の概要をまとめたのなら、そこから導きだされるべきものがある程度、見えているはず。
惜しい、次を期待します。えらそうに言って、すいません。

ふと、思ったのだが、海外の著名人の読み方は、楽しむよりも、自分ならば、こうするとかという発想を持って読んでいるんではないだろうか。それが合わせ鏡のように、無限に自分を映し出すツールとして楽しんでいるのではないか。
そんな気がしてならない。
「自分も他人も知らない自分」、「自分も他人もしらないアイデア」を産む暗黒面を出そうというのか。
なんだかなあ。

2023年3月5日

侍ジャパンが、いまひとつ、盛り上がりがないのなのかなと感じるのだが、話題先行で、中身が追いついていない感じ。この時期だから、調整だけでも大変だと思うのだが。
パブリック・ビューイングを行うそうだ。ひとが集まらないという記事があった。
そうだろうね、野球って攻撃と守備に分かれているし、間が空く、サッカーのように一瞬で守りと攻撃も入れ替わらず、真剣に食い入るように見るよりも、めし喰いながら、酒飲みながらでも、動きにいちゃもんつけながら、見る方があっているように思う。高校野球は、母校に集まり、テレビ観戦というPVとは違うんだろうけど、味のある楽しみ方がある。
居酒屋とか、スナックとかに集まりて、四の五の四の五の言いながら、ワイワイやるのが、野球の醍醐味かなとも思うのは、偏見でしょうか。
フェアプレーを唱える、に、してもボールにしても、メジャーのやり方を押し付けるのは、それが本当にフェア・プレーでしょうかね、とも思うけど。今回はメジャー・リーガーも多く参戦、楽しみたいですね。
勝ち負けは別にして。
負けると腹が立つけどね。

『ミッキー7』エドワード・アシュトン、ハヤカワ文庫SFを読む。
アメリカによるアメリカのためのアメリカのSF。と、感じる。映画化も決まっているそうだ。映画は『ミッキー17』、もう映画のオープニングは、エクスペンダブルにされ続ける怒涛の展開が予想される。
そうなるだろうな、しかし、エクスペンダブルがなぜか、生き残ってしまって、再生した自分と出会う。
そこは食糧難で、喰うに困るような事態と、ムカデ型の(むう、よくある昆虫型敵勢生物の一パターンであるが、むやみに戦うストーリーでないけど、たぶん映画だとどうなんだろう)異星人が登場する。
肩の凝らない作品で、サクサク読めるのも魅力。最近、暗い話が多かったようにも思う。昨年のアポロ計画のアナザーストーリーの二遍は、全体的に、トーンが暗めで、未だに読み終えられずに悪戦苦闘中。
自分は能天気だから、軽めのものが好きなのさ、と。
食料の中に「コオロギ」が出てくるが、まさか姿そのまんまではないよねえ、「ざざ虫」も「蜂の子」も、「いなごの甘露煮」も食べているわたしでも、「コオロギ」そのまんま姿揚げは無理です。
なぜかと言えば、おふくろが「鈴虫」を大量に飼っていた時期があって、どうもその姿が眼に焼きついてまして、無理。
コオロギも鈴虫も似たものでしょ、あれを食べるのかと思うとなんとも、、「いなご」は平気なんだけど。。。
食べつけてないだけ、いや、違うような気もする。「蜂の子」は山梨の山の方の客と蜂取りにつきあわされ、ついでに食べさせてもらったのだが、客がいなければ食べてなかった。「ざざ虫」も伊那松島の客につきあいで食べたので、率直にいうと、少し抵抗ある。「いなご」は、子どものころ、おふくろ(群馬の赤城山の近く)が買ってきたのを食べてたので、抵抗なし。
親父はまったく手をつけなかった。鯨のベーコンととんかつ好きな野菜嫌いの親父では無理もなし。

2023年2月28日

『異常(アノマリー)』早川書房を読む。
「このミス」でも11位、「SFが読みたい」でも4位、両方にランクされて、そこそこ、良い線にいるし、コメントを読むと、おお、このひとがというところが気になって、読む。
導入は、あのテレビドラマの『LOST』風で、進むと、なんやらテレビドラマの『4400』風になり、途中から、唸り始めてしまいました。
いや、まあ、こういう話を書けるようになって、しかも賞も取ってしまうのねという驚き。確かに、あさっての方向に向かって突っ走ってしまうのだが、これはキリスト教的な常識がないと通用しないんじゃないかと思える。
そこまでいくと難しい話になってしまうし、そこまで深読みはしていないので、(と言って、逃げる)小説としては、すごいね、と思う。
が、しかし、これはジャンルを逸脱してるし、SFなのか、という疑問もある。個人的にはOKなんだが。
なかなかに素敵な読書であった。

フランク・ハーバートの『砂漠の救世主』が新訳で出る。期待している。しかも『子どもたち』まで、出してくれるという。三部作まででもうれしい。
期待。
アニメ『うる星やつら』を見ているのだが、原作に忠実な傑作選ということで、無難なまとめ方なのだが、でも、ぶっ飛んだ作品も見たいんですけど。無理だろうな。
曲が、ひと昔前のボカロ風でって、いまもあまり変わってないか、絵と合っている感じ。

仕事が忙しいというより、体力的に落ちてきていて、しんどさが倍化されているよう。けど、やらないとおそらくもっと悪い状況になるだろうなと思うので、歯を食いしばってがんばっている。
たまには手を抜かせてねと、思ったりして。

2023年2月19日

河出文庫『イチョウ 奇跡の二億年史』 ピーター・クレインを読む。
2014年に単行本が出たときから、読みたかった。けど高かった。当時、会社潰して、自己破産して免責を受け、もう一度、再就職しての状況で、とても手がでるわけもなく、そのうち日々の中でわすれてしまった。
今回もリストを作っている中で、あ、これ出てたんだという驚きとともに触手が動く。
本屋に行ってれば、一通り、新刊を全部見通すはずであり、気がついたと思うのだけど、行ってなかったからね、早速、読む。
これが、これでもかってくらい、徹底的な解明をしてあって、まだまだこうなんだよという怒涛のごとき、イチョウの全体像を見せてくれる。
銀杏の見方が変わりました。朝から歩いて仕事場に向かう途中で、小さな神社があって、いつもお祈りしてから行くのだけど、そこにイチョウの木が何本かある。
つい見上げて、しみじみと見つめてしまう。
そのぐらいのインパクトがありました。硬派なノンフィクションを読んでないと、この歯ごたえにはついていけないかもしれないというくらいの徹底さ。
いや、よかった。
日本、中国、ヨーロッパという世界から二億年前から現在までの動きと、こんな人物まで出てきます。
マリー・ストープス(Marie Charlotte Carmichael Stopes)E・ケンペル(Engelbert Kaempfer)ハイリッヒ・フォン・シーボルト(Heinrich von Siebold)、いやびっくりです。リストに登録するときに、一応、この作家はこんなひとだったというのは調べるので、記憶の片隅にあり、読んでる途中でびっくり。
驚きがある作品に出会えるのは、醍醐味ですが、久々の感動です。

ご一読を。

2023年2月12日

『フォワード 未来を視る6つのSF』 Forward (2019)editor:ブレイク・クラウチ(Blake Crouch)
ハヤカワ文庫SF2392 cover:緒賀岳志 commentary:牧眞司 2022/12 ISBN978-4-15-012392-5

「夏の霜」 Summer Frost ブレイク・クラウチ(Blake Crouch)translator:東野さやか 「エマージェンシー・スキン」 Emergency Skin N・K・ジェミシン(N. K. Jemisin)translator:幹遙子 「方舟」 Ark ベロニカ・ロス(Veronica Roth)translator:川野靖子 「目的地に到着しました」 You Have Arrived At Your Destination エイモア・トールズ(Amor Towles)translator:宇佐川晶子 「最後の会話」 The Last Conversation ポール・トレンブレイ(Paul Tremblay)translator:鳴庭真人 「乱数ジェネレーター」 Randomize アンディ・ウィアー(Andy Weir)translator:小野田和子
ジェミシンにアンディ・ウィアーと収録されている作品は話題性、充分、しかもおもしろかった。
ブレイク・クラウチは、『パインズ』が当時、評判になった記憶がある。読もうかなと思いながらもそのままになっている。少しもったいないかなと思うほどだった。
ジェミシンは『オベリスクの門』が読み切れてない。もう第三部が出たのに、これから読まなきゃ、なのだが、この作品もそうだけど、けっこう気力が要求されるんだよね。
ベロニカ・ロスは『ダイバージェント』、映画を見ているが、それなりに楽しい作品だったけど、今回の作品も、そんな雰囲気がある。
アンディ・ウィアーの作品は、らしい作品で、おもしろかった。
フォワード、最先端、最前衛の意味もあるのか、と構えた部分もあったけど、そうでもなかった。ご一読を。

2023年2月5日

イアン・マクドナルド(Ian McDonald)という作家を読みこなすのは、なかなかに骨が折れる。
詩情とアイデアがくっついていて、すごいなと思う前に身構えてしまうところがある。再読しなければという思いにいつも駆られるのも、特徴的だ。
原稿用紙で150枚くらいかなと思うけど、一冊の本として出したのは、素晴らしい。高いのは時世を考えれば致し方ないだろうし、良い作品は読みたい。ハヤカワSFシリーズで出せば、かなり薄くなるだろうし、単行本がいい。
しかし、久しぶりだ。ゆったりとページをめくり、楽しむのがよい。
感謝。

2023年1月29日

なんとなく見始めた『機動戦士ガンダム 水星の魔女』がおもしろい。
いままでのガンダム路線ではないので、すんなりはいれるし、なによりおもしろい。けっこう凝っている設定もあって、先が楽しみである。評判は良いみたいだけど、どうなのと思ってみることが多いけど、確かに、そういう見方の方が当たりが多いようだ。

『英国クリスマス幽霊譚傑作集』editor:夏来健次 創元推理文庫
これまたオーソドックスな作品ばかりを集めたアンソロジー。有名どころは、ほとんどないが、詳細な作家紹介つきで、安心できる。
幽霊ものが基本だが、これでもかというくらい古風。嫌いかと言われると、実は好きだったりするわけだ。ハードSFや、派手なモダンホラーだけでは飽きてしまいます。
怪奇小説の基本路線が、こういう作品たちであると思う。ほぼ初訳というのは、凄いな。
まあ、確かに後世に残る名作ではないけども。

「クリスマス・ツリー」 A Christmas Tree (1850) チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)translator:平戸懐古
「死者の怪談」 The Dead Man's Story (1858) ジェイムズ・ヘイン・フリスウェル(James Hain Friswell)translator:平戸懐古
「わが兄の幽霊譚」 My Brother's Ghost Story (1860) アメリア・B・エドワーズ(Amelia B. Edwards)translator:夏来健次
「鋼の鏡、あるいは聖夜の夢」 The Steel Mirror: A Christmas Dream (1867) ウィリアム・ウィルシュー・フェン(William Wilthew Fenn)translator:平戸懐古
「海岸屋敷のクリスマス・イヴ」 Christmas Eve in Bearch House (1870) イライザ・リン・リントン(Eliza Lynn Linton)translator:平戸懐古
「胡桃邸(くるみやしき)の幽霊」 Walnut-Tree House: A Ghost Story (1878) J・H・リデル夫人(Mrs. J. H. Riddell)translator:夏来健次
「メルローズ・スクエア二番地」 Number Two, Melrose Square (1879) セオ・ギフト(Theo Gift)translator:夏来健次
「謎の肖像画」 A Mysterious Portrait (1888) マーク・ラザフォード(Mark Rutherford)translator:夏来健次
「幽霊廃船のクリスマス・イヴ」 Christmas Eve on a Haunted Hulk (1889) フランク・クーパー(Frank Cowper)translator:夏来健次
「残酷な冗談」 A Gruesome Joke (1891) エリザベス・バーゴイン・コーベット(Elizabeth Burgoyne Corbett)translator:夏来健次
「真鍮の十字架」 The Brazen Cross (1893) H・B・マリオット・ワトスン(H. B. Marriott Watson)translator:夏来健次
「本物と偽物」 The Real and the Counterfeit (1895) ルイーザ・ボールドウィン(Louisa Baldwin)translator:夏来健次
「青い部屋」 The Blue Room (1897) レティス・ガルブレイス(Lattice Galbraith)translator:夏来健次

2023年1月26日

『本の雑誌』と出会ったのは、日大経済で、勉強せずに神保町でSFを買いあさっていたころだった。
中高生のときには文学なんぞを読むこともしないボンクラだったわたしは、SFと出会い、のめり込んでいたのだが、文学的素養もなく、それでこんなおもしろいジャンルの本があるんだと、なんとなく臆していた部分があり、声を大きく言うこともできず、あまりひと様にも話もできず、さりとて読み続けるくらいしかできなかったころに出会った。
確か三号か、四号だと思う。購入店はうろ覚えだが、書泉グランデだったと思う。
読んで、出始めていた冒険小説、SF、その指針になった。ずいぶん参考にしたし、ここから思わされたのは、「おもしろいものはおもしろいと言え」ということだと思う。
わたしにとっては画期的なことだった。エンターテイメントがおもしろいと素直に言えるのが、恥ずかしいことではないんだ、ということが。
それから、読むことも一時、中断してしまったが、未だに手に取るのは、本好きの性なのかもしれない。
目黒考二さん、北上次郎氏、雲の上の方のようで、とても高齢かなと思い込んでいたけど、10年しか違わないのはびっくりした。
一度も本の雑誌社に行くことはなかった。機会は当然、いっぱいあったはずだけど、なんとなく気おくれした。
いまとなっては遅いが、一度、お伺いして、お会いしておけば、よかった。
合掌。

2023年1月22日

あれ~、『吸血鬼ラスヴァン』を、必死に探しているのだけど、家の中に見当たらない。でも、少しは読んだ記憶はある。なら買ってあるはずだと思って、探しているけど、見当たらない。
へんだ。これだけ探してもないのだから、買ってないのか、じゃこの少し読んだって記憶はなにかなと、考えてもわからない。
しばらくすると出てくることもあるから、いまは静観しよう。
いまは、少し年金ももらえるようになって、かといって、まったく働かないでいられるほどの状態でもないので、働いている。本を読む時間はわりとあるのだが、酒飲んだり、つまらんアニメを見たりしてしまう。
介護で、車での送迎や現場対応などなんでもやっているけど、体力がないので、一日やると、どうしても一日休みが欲しくなる。
介護の管理職は本当に大変である。雑用処理みたいなことから、国対応の報告書、加算処理までしないとだめなので、その処理は膨大な量に及ぶし、ご家族と接しなければならないので、そのストレスも半端ない、いまは端で見てるだけなので、お疲れ様だよねと思いながら、継続的な負担がない現場だけの仕事で、きている。
それでもストレスがかかる。
「じじい」の心の中では、「こいつは、なぜ、ここで手を抜くんだ」「こいつは、なぜ、そこまで考えないんだ」とぼやくことが多いけれど、「にこっ」とごまかし、余計なことは言わない。
それでも、溜まるものは溜まる。
たまに爆発しそうになるが、「怒れるご老人」にはなりたくないので、堪える。結果、溜まりに溜まったものを、酒でごまかす。
あまり健康にはよくないよなあと思いつつ、日々をおくる。いま、溜まっているんだよね。ああ、吐き出したい、若い癖にめんどくさがりやの奴といっしょに仕事はしたくないんだよ、と、言ってやりたい。

仕事をするのは、体力的に「整う」という準備運動だと思っている。どんな仕事でも体力を使わない仕事などないし、頭を使わない仕事もない。
仕事をしないと、堕落してしまうと思うので、できるところまで、がんばる。
若くはないので、無理はできないので、ゆっくりやります。

『英国クリスマス幽霊譚傑作集』を読んでいる過程で、このあと『吸血鬼文学名作選』を読む予定なのだが、それで『ラスヴァン』が気になったのだが、いったいどこへいったんでしょうね、大きい本なのに。

2023年1月15日

『このミス』や、『ミステリを読みたい』やら、『本格ミステリ・ベスト10』などやら、『本の雑誌』を、つらつら眺めながら、おもしろそうな本を探す。
読まなきゃいけないのが、いっぱいあるのに、なおかつ、探しまくるというアホさ加減。
全体的な傾向というか、一年ごとに流れみたいのがあるので、参考にしたいというのが理由だが、いくつか見てると、これはという作品が浮かび上がる。なにせ、ミステリは、ほぼ読めていないし、和本(日本作家の作品をこう言っている)にいたっては、ほぼ未読。リストを見ているのは、おもしろいのだけど、このサイトへのリスト化が、まったくできていない。楽しんでるからよくないのだけど。。。
今回は、その中から、「う~ん、これはなんだ」と思うのがあった。

『方舟』夕木春央、講談社

特殊な建物での殺人事件、驚愕の結末。ふん、だいたい驚愕の結末なんだよね、と、ぼやく。そもそも特殊な建物での殺人というが、動機のための建物なのか、手段のための建物なのか、いずれにしても無理がある。その無理を超越して、なおかつ、おもしろいものは難しいと思っている。
動機、手段、建物が同じレベルで必要になっているというのが困難なんだ。
評判は良いし、イラストもある。「なんだ、この特殊な設定の建物は、意味不明だ」と思うとムラムラと読みたい気持ちが高まる。たぶんにど変人な動機であるが、読んだ。

「うわ、なに、これ」である。犯人は、こいつじゃないかという推測はできるのだが、そこから驚愕する結末となると、薄っぺらい語りてと、やけに饒舌で理屈っぽい探偵役、ここらへんで引っかける結末かなと思っていると、いや、まあ、びっくり。
久々に、いいもん、読ませていただきやした。

これがあるから年末のベスト作品の本は見逃せないんだよな。

2023年1月9日

『誰?』を、読む。
前回の翻訳とは、まったく違うもののように感じる。前回の翻訳よりは物量もあり、内容もアイデンティの問題が、より明確に感じられる。まったく驚いたね。
前回の本を探したんだけど、見つからなかったので、見比べたり、読み比べたりはしていない。出だしこそは古さを感じさせるものの、おもしろい。過去の作品というと、先々月のハインライン『明日を超えて』のように、ちょっと、微妙かなというものを感じさせる場合があるが、今回はいい。
1956 Hugo Award Novel Winnerを、見ると、この作品の方がいいと思うけどな。

創元SF文庫で、『吸血鬼は夜恋をする』の新版が出る。
editor/translator:伊藤典夫(Itō Norio)
ショートショート集で、ほぼ、どこかしらで読んでいたので、物欲的には、さほど探してまで読もうとは思わなかったが、改めて読んでみると、少し洒落た作品集。古さはしかたがない。
読んでると、やはりマシスンはすごいなと、感じられた。
新しく収録された作品はお買い得。かなり珍しい作品もある。「思考の檻」とか「岩山の城」とか。
マーガレット・セント・クレアの短篇集はなんとか、ならんのか。
もうひとつ、びっくりしたのが、創元SF文庫の3月発売予定の作品。本気で復刊するのか。伊藤典夫訳の作品が、考えられないスピードで出てくるのは、本当に驚きである。

「びんの中の恋人」 The Girl with the Hundred Proof Eyes ロン・ウェッブ(Ron Webb)
「死線」 Deadline リチャード・マシスン(Richard Matheson)
「レミングとの対話」 Interviw with a Leming ジェイムズ・サーバー(James Thurber)
「お墓の引越し」 The Tombling Day レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)
「橋は別にして」 Not Counting Bridges ロバート・L・フィッシュ(Robert L. Fish)
「指あと」 Finger Print リチャード・マシスン(Richard Matheson)
「一ドル九十八セント」 $1.98 アーサー・ポージス(Aryhur Porges)
「受話器のむこう側」 The Other End of the Line ウォルター・S・テヴィス(Walter S. Tevis)
「たとえ赤い人殺しが」 If the Red Slayer ロバート・シェクリイ(Robert Sheckley)
「魔法の窓」 The Magic Window ロバート・F・ヤング(Robert F. Young)
「白絹(しらぎぬ)のドレス」 Dress of White Silk リチャード・マシスン(Richard Matheson)
「バーニィ」 barney ウィル・スタントン(Will Stanton)
「地下室のなか」 The Thing in the Cellar ディヴィッド・H・ケラー(David H. Keller)
「ひとりぼっちの三時間」 The Three Hours You Left Me All Alone マン・ルービン(Man Rubin)
「思考の檻(おり)」 Protect Me From My Friends ジョン・ブラナー(John Brunner)
「選択」 The Choice ウェイランド・ヤング(Wayland Hilton Young)
「頂上の男」 The Man on Top R・ブレットナー(R. Bretnor)
「わが心のジュリー」 The Likeness of Julie リチャード・マシスン(Richard Matheson)
「ジュリエット」 Juliette クロード・F・シェニス(Claude F. Cheiniss)
「くたばりぞこない」 The Die-Hard アルフレッド・ベスター(Alfred Bester)
「旅行かばん」 The Canvas Bag アラン・E・ナース(Alan E. Nourse)
「地球のワイン」 The Wines of Earth マーガレット・セント・クレア(Margaret St. Clair)
「子供たちの庭」 Kindergarden フリッツ・ライバー(Fritz Leiber)
「恋人たちの夜」 Hell Hath No Fury ジョン・コリア(John Collier)
「コールガールは花ざかり」 Flourish of Strumpets リチャード・マシスン(Richard Matheson)
「吸血鬼は夜恋をする」 She Only Goes Out at Night ウィリアム・テン(William Tenn)
「不滅の家系」 Man of Distinction マイクル・シャーラ(Michael Shara)
「良き隣人」 The Good Neighbors エドガー・パンクボーン(Edgar Pangborn)
「プロセス」 Process A・E・ヴァン・ヴォクト(A. E. van Vogt)
「岩山の城」 The Castle on the Crag ピージー・ワイアル(P. G. Wyal)
「デイ・ミリオン」 Day Million フレデリック・ポール(Frederik Pohl)
「ふるさと遠く」 Far from Home ウォルター・S・テヴィス(Walter S. Tevis)

2023年1月3日

あけまして、おめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

年末に、気になる本がいくつか出てまして、その中の一冊。ぎょっとしたのが、これでした。
『アメリカ鉄仮面』 Who? アルジス・バドリス(Algis Budrys)の新訳版。
門下生の柿沼瑛子氏の翻訳。
柿沼瑛子さん、最初期の『モンスター誕生』 Born of Man and Woman リチャード・マシスン(Richard Matheson)で、いいかなと思い、『殺戮のチェスゲーム』 Carrion Comfort ダン・シモンズ(Dan Simmons)で、ぶっ飛びました。
『殺戮のチェスゲーム』という、いかにもという訳題ですが、『腐肉の愉しみ』とでもした方が、とも思います。売れそうもないけどね。
吸血鬼もののモダン・ホラーのひとつの頂点でしょう。
ダン・シモンズも、作品は出ているようですが、翻訳されることはなくなりました。

『誰?』、原題をいかした書名になりました。<奇想天外の本棚>の一冊として、KITEN BOOKSと書かれています。
そのうれしい奇想天外の本棚の第一期は以下のとおり。版元を原書房から国書刊行会に変更して、いや国書様には足を向けられませぬ。うちからは北東なんで、いつも足の位置に気をつけまする。

しかし、なんというか、え、売れるのかなと不安になるものもある。変だよね、「変」、誉め言葉ではあるけれど、山口雅也様、素晴らしいラインアップで。
『吸血鬼ヴァー二ー』、第一巻ということは、何巻になるんでしょうか。『吸血鬼ラスヴァン』で、その片鱗を楽しませていただこうと思いますが、いえ、そのなんというか、売れなきゃ次はないんですよね。
しみじみと、全巻揃えたくなりました。

奇想天外の本棚 第一期 12冊

『九人の偽聖者の密室』 Nine Times Nine H・H・ホームズ(H. H. Holmes)translator:白須清美
『Gストリング殺人事件』 The G-String Murders ジプシー・ローズ・リー(Gypsy Rose Lee)translator:柿沼瑛子
『死体狂躁曲』 The Wooden Overcoat パミラ・ブランチ(Pamela Branch)translator:小林晋
『プライアブルの脅威、その他の脅威』 The Pliable/Tonight the Sky Will Fall/The Day the Sun Died ダニエル・F・ガロイ(Daniel F. Galouye)translator:尾之上浩司

短篇集、うち、二編は訳されている。
「プライアブル」 The Pliable (F&SF 1956/ 5)translator:城戸尚子(小尾芙佐(Obi Fusa)) S-Fマガジン(S-F Magazine)1961/ 5 No.16 illustrator:中島靖侃(Nakajima Seikan)
「今宵、空は落ち…」 Tonight the Sky Will Fall (Imagination 1952)translator:山田忠(Yamada Tadashi) S-Fマガジン(S-F Magazine)1985/ 4 No.324-1985/ 5 No.325 illustrator:福留朋之(Fukutome Tomoyuki)
のふたつ、うち「プライアブル」は、わたしも未読。

『最後にトリヴァー氏は』 At Last, Mr. Tolliver ウィリアム・ウィーガンド(William Wiegand)translator:宮脇孝雄
『五つの箱の死』 Death in Five Boxes カーター・ディクスン(Carter Dickson)translator:白須清美
『恐ろしく奇妙な夜』 Night of Horror and Other Stories ジョエル・タウンズリー・ロジャーズ(Joel Townsley Rogers)translator:夏来健次
『濃霧は危険』 Danger Unlimited(Welcome to Danger) クリスチアナ・ブランド(Christianna Brand)translator:宮脇裕子
『九番目の招待客』 The 9th Guest オーエン・ディヴィス(Owen Davis)translator:白須清美
『フランケンシュタインの工場』 The Frankenstein Factory エドワード・D・ホック(Edward D. Hoch)translator:尾之上浩司
『誰?』 Who? アルジス・バドリス(Algis Budrys)translator:柿沼瑛子
『吸血鬼ヴァーニー 1巻』 Varney the Vampire ジェームズ・マルコム・ライマー(James Malcolm Rymer)&トーマス・ペケット・プレスト(Thomas Peckett Prest)translator:三浦玲子/森沢くみ子

第二期では、ぜひ、ぜひ『無頼の月』をと思っています。

Update:2023