ameqlist 翻訳作品集成(Japanese Translation List)
Producer:雨宮孝(Amemiya Takashi)
fandom name:AMEQ
since: 1997/ 4/ 8
2021年1月25日
『災厄の町』 Calamity Town エラリイ・クイーン(Ellery Queen)
昔、学習雑誌、小さい子向けにはあるようだけど、小学生、中学生、高校生には絶滅種らしい。その付録に、ちっこい手帳サイズの特集があった。
アブリッジされた小説とか、『怪奇はこれだ』とか『SF入門』とか、あった。その中に『トリック百科』みたいなものがあった。ミステリのトリックを集めたもので、出典は明らかにしてないけど、有名なトリックを集めたもので、何度も何度も読み返したものである。
崖に向かって、歩く足跡とか、傷跡がいっぱいあるとか、そんなのがいっぱい、子ども心に、よくわからないなあというトリックもあった。
それが、あ、これかあと思った。
トリックだけ抽出すると、「そんなもん、すぐわかるじゃん」と思っていて、「こんなのはトリックにならん」と、ずっと思っていた。
まさか、それがこの作品だとは、まったく想像もしていなかった。
本の半分近くで、ようやく事件が起きる。
それまでは、しつこいくらいの家庭の事情が書かれる。なんなんだよと、昔は思ったかもしれないけど、今は、ゆっくり読める。
いや、まあ、そうなんですね、久々にびっくりしました。
良い読者ではないミステリ読みだけど、いまさら、こんなに衝撃を受けるとは、思わなかった。
改めて思うけど、読まず嫌いは、良くない、けど、たまに読むと衝撃を受ける。
おもしろい、さて、読まず嫌いは、いくつかあるが、次は誰を読もうか。
2021年1月17日
『フォックス家の殺人』 The Murderer Is Fox エラリイ・クイーン(Ellery Queen)の新訳版が出た。
クイーンというと、あまり読んでないのは確かなんだけど、有名なライツヴィルもの、本人は読んでないと思い込んで、読み始めてみると、わりとおもしろい。あれ、こんなにおもしろかったっけと思いつつ、読了。
ふと、リストを見ると、大昔に読んでいたようだ。『十日間の不思議』は読んでいるのは間違いないが、これ、読んでたっけと首を傾げる。ネタ的には有名なトリック(と言えるのか?)なんで、たぶん読んでるんだろうけど、まったく記憶になかった。
純粋に楽しめたのは、驚きでした。若いときは、なにがなんでも読んでやろうという想いだけで、すっ飛んでいたので、少し余裕ができて行間を楽しめるようになったのかもしれない。
ちょっと読んでみようかなという気持ちにもなる。
『短編ミステリの二百年』を読んでいると、これも読んでないとか、あれも読んでないとかという気分になるので、なにかしら、読む意欲を起こさせるものでもある。
『災厄の家』を読んでないんだよね、しかし、気になるSFはいっぱいであるのに、そんなにお金はないぞ。
2021年1月12日
しかし、なぜ2月7日までの緊急事態宣言なのかなと思っていたけど、2月にオリンピック組織委員会があるのね、「抑え込んだから、さあ大丈夫です」と言いたいわけね、でもね、現状把握できないご老体ばかりが、堅い頭で考えて、理想的な姿に持っていこうとしているんだろうけど、自分もそうだけど、年齢を重ねると、理想的な姿を追い求めるのはわかるけど、あんたら国民の生活や命が掛かっているものと、自分たちのプライドを考えたときに、「どっちが大事なんですか」と聞いてみたいんですけど。
答えは、卑屈なニヤニヤ笑いか、激高した、眉毛の吊り上がった(-_-メ)で、「当たり前じゃないですか」と心にあるものと違うことを言う。
この国の政治家と言われるひとたちの哀しい性が、いつ産まれたのだろう。
「貧すれば鈍する」という諺があるが、「政治家すれば鈍する」に変えればいい。
失敗すれば、「市中引き回しのうえ、獄門さらし首」にすべきひとたちでは、ないのか。潔いという言葉を知らないのか。なぜ、こんなグズグズする国になったんだ。
『短編ミステリの二百年4』 editor:小森収(Komori Osamu) 創元推理文庫(Sogen Mystery bunko)
cover:柳智之 design:中村聡 2020/12/25 ISBN978-4-488-29905-7
今回もたっぷりの解説と良いセレクトで、読み応え充分。
解説は、読めば読むほど、いろいろ考えることもあって、どう、このリストに反映させようかと思っている。
いつもながら、素晴らしい。
遅くなりましたが、ありがとうございます。
- 「争いの夜」 Fight Night ロバート・ターナー(Robert Turner)
- 「獲物(ルート)のL」 L as in Loot ローレンス・トリート(Lawrence Treat)
- 「高速道路の殺人者」 Killer on the Turnpike ウィリアム・P・マッギヴァーン(W. P. McGivern)
- 「正義の人」 Mr. Justice ヘンリイ・スレッサー(Henry Slesar)
- 「トニーのために歌おう」 Sing a Song for Tony ジャック・リッチー(Jack Ritchie)
- 「戦争ごっこ」 The Ducker レイ・ブラッドベリ(Ray Bradbury)
- 「淋しい場所」 The Lonesome Place オーガスト・ダーレス(August Derleth)
- 「獲物」 Prey リチャード・マシスン(Richard Matheson)
- 「家じゅうが流感にかかった夜」 The Night We All Had Grippe シャーリイ・ジャクスン(Shirley Jackson)
- 「五時四十八分発」 The Five-Forty-Eight ジョン・チーヴァー(John Cheever)
- 「その向こうは -闇」 Over there ...Darkness ウィリアム・オファレル(William O'Farrell)
- 「服従」 Man Gehorcht レスリー・アン・ブラウンリッグ(Leslie Ann Brownrigg)
- 「リガの森では、けものはひときわ荒々しい」 In the Forests of Riga the Beasts Are Very Wild マージェリー・フィン・ブラウン(Margery Finn Brown)
- 「短編ミステリの二百年」小森収
- 第五章 四〇年代アメリカ作家の実力(承前)
- 6 「ハードボイルド最後の巨人」
- 7 「スピレイン旋風」
- 第六章 ハードボイルドから警察小説へ -マンハントとその周辺
- 1 「マンハントという雑誌」
- 2 「雑誌の時代のミステリ作家 -リチャード・デミング」
- 3 「マンハントのクライムストーリイ」
- 4 「エヴァン・ハンター -通俗ハードボイルドの雄」
- 5 「警察小説の隆盛」
- 6 「エド・マクベイン -五〇年代アメリカミステリの顔」
- 第七章 ヒッチコックの陽の下に -アイデアストーリイの流行とその受容」
- 1 「ヘンリイ・スレッサーとアイデアストーリイ」
- 2 「C・B・ギルフォードの場合」
- 3 「ロバート・アーサーの持ち味」
- 4 「アイデアストーリイへの傾斜」
- 5 「アイデアストーリイの雄 -ジャック・リッチー」
- 6 「スレッサー再評価のために」
- 第八章 隣接ジャンルの研究(1) -幻想と怪奇
- 1 「『怪奇小説傑作集』」
- 2 「モダンホラーへの道」
- 3 「アーカムハウスという出版社」
- 4 「パルプ作家を抜け出した男 -レイ・ブラッドベリ」
- 5 「ファンから作家へ -ロバート・ブロック」
- 6 「オーガスト・ダーレスと淋しい場所」
- 7 「奇妙なイマジネーションの発動 -チャールズ・ボーモント」
- 8 「異色作家への道 -リチャード・マシスン」
- 9 「『13のショック』のショック」
- 10 SFから遠く離れて
- 第九章 再び雑誌の時代に
- 1 「ジャック・フィニイの世界」
- 2 「「くじ」以降のシャーリイ・ジャクスン」
- 3 「不安と憂鬱がミステリに接近するとき -ジョン・チーヴァー」
- 4 「エドガー賞の殿堂(1) -「ヨットクラブ」まで」
- 5 「エドガー賞の殿堂(2) -スリックマガジンからの影響」
2021年1月6日
『万物(ばんぶつ)の尺度を求めて -メートル法を定めた子午線大計則』 The Measure of All Things ケン・オールダー(Ken Alder)
たまたま2006年発売の作品が並んだけど、読みたいなと思って、そのままになっていて、今頃、読んでいる次第。
なぜ、読みたいと思ったのか、子どもの頃に、ふと思ったメートルって何。
朝の日課は、かつおぶしを削ることだった。かつおぶし削り器で、「かしかし」と削る。薄く掻いた方がおいしい。かつおぶし削り器とはいえ、「鉋」をさかさまにした形。どうしても毎日、削っていると刃が引っ込んでしまう。そうすると、裏から刃を叩いて、調整する。一度、叩きすぎて、刃が出過ぎて、まともに削れなくなってしまった。
子ども心に「まずい」と思ったわけで、おふくろに言うと、「大工さんのとこ、行っといで」と言われる。大工さんは、家の一軒向こうのお宅で、棟梁の家だったので、当時、いなせな若い衆が出入りしていた。「もんもん」の方々が多くて、「はっぴ」を着て、とても近寄りがたかったが、恐る恐る削り器を出すと、「おお、これは出過ぎてるな」と、言って、固くはまりこんでいた「刃」を一発で取り出し、しかも砥いでくれた。その時に、大工道具を見る機会があり、とっても不思議な形の道具が多かった。置きに入りは「金尺」、しかしセンチではない。学校ではメートルを教わっていて、昔からの尺度が、さっぱりわからない。
一尺とか寸とか、なぜふたつも測り方があるの、当時、テレビで洋画が好きで見ていて、何やら、ヤードとかフィートとか、それは何。
ものの長さを図るのに、いくつも測り方がある。なぜ、どうしてなのと思う。
日本とアメリカとイギリスとが違い、「世界の国の街」を歩き回る番組を見ていると、フランスとイタリアはメートルなのか、と気づく。歴史書を紐解けば、始皇帝は度量衡を統一したとある。
基準は大切である。しかし、そのもとになったのは、どう測ったのでしょうか。
その答えが、この本だった。
しかもフランス革命下のフランス、フランスの数の数え方のややこしさは知っているけど、この国で、そのメートル(mètre)を測定した。子午線を測定し、そこからメートルを導き出したのである。
パリを起点に北はダンケルク、南はスペイン、バルセロナまで測定したのである。しかもフランス革命の真っ最中。
伊能忠敬の偉業も凄いが、まだ国内は平安であった。
革命で価値観が揺らぐなか、ただひたすら科学的真実を求めて、三角測量をしつつ旅をする。
しかも、その測定結果になにやら疑問符がつくらしい。
地味な話であるのは、間違いないが、とてもおもしろかった。いや、すべてのひと向けではない。大部であるし、長い。
それでも、良かった。真実を探す努力を忘れないようにしたいものだ。
知ったいまでは、メートルって、フランス語っぽいよねと思うなり。