ジェイムズ・ブラッドリー
James Bradley
1954-
5万人近くがなくなっていった硫黄島の闘いである。
『硫黄島の星条旗』、あの有名な写真の六名の兵士をたどる物語だ。
トム・ウルフの『ライトスタッフ』を読んで、その後の宇宙飛行士の物語を知るにつれ、栄光のときを迎えたひとびとのその後の物語に興味を持つようになっていったのだが、『硫黄島の星条旗』は、とても悲惨な当時の物語とその後の物語に彩られている。
多少、日本人であるわたしには納得いかない部分もあるし、その解釈には、ちょっと待てというところもあるが、できるかぎり公平に理解しようとする姿勢は評価はできると思う。
作品を盛り上げようとする傾向は伺えるけど。ノンフィクションなのだからハリウッド的な手法はいらないとは思うのだけど。
戦争というなかで、それこそささいなものさえも宣伝効果に使おうとしてしまうことは、アメリカも日本もあまり変わらないわけである。その道具にされてしまった人たちの悲しい物語であり、当事者たちの子どもが語りなおしているがために美化されている部分も残るのだろうけど、硫黄島の悲惨さは、そしてそこで生き残れた幸運さと、もうひとつの幸運さを当事者たちがどう受け止めたかの悲しい記録でもある。
書かれたことがすばらしかったと言えるノンフィクションでもある。歴史の一部分にしかならなかった事柄が、ひとりの男の生き方を通して、裏に潜む深い深い考察と悲劇を、その息子に書かせたということ自体、すばらしい。ご一読を。
と、書いたのが、読んだ当時。2002年である。それから映画にもなって、アメリカ、日本、両方とも見るが、う~む、なんというのか本の方が印象深い。
Nonfiction/Etc.
『硫黄島の星条旗』 Flags of Our Fathers
- Joint Work:ロン・パワーズ(Ron Powers)
- translator:島田三蔵(Shimada Sanzō) Publisher:文春文庫(Bunshun bunko)
- cover:AP/WWWP 地図:Mary Craddock Hoffman design:斎藤深雪 commentary:島田三蔵(Shimada Sanzō) 2002/ 2/10
- ISBN4-16-765117-3
『父親たちの星条旗』 Flags of Our Fathers
- ヤングアダルト版
- Joint Work:ロン・パワーズ(Ron Powers)
- translator:大島英美(Ōshima Emi) Publisher:イースト・プレス(East Press)
- 2006/10
- ISBN978-4-87257-730-3
Update:2023